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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 CRISPRkoやCRISPRiを含むCRISPR技術は機能ゲノミクスにおいて、大規模な機能喪失(LOF)スクリーニングのツールとして広く利用されている。しかし、遺伝子編集過程におけるインフレームDNA修復や選択的スプライシングを介した活性タンパク質発現の残存、強力なエピジェネテ …
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[注] CRISPRiとCRISPRaは触媒活性を失活させたCas9 (dCas9)にそれぞれ転写抑制因子と転写活性化因子を融合させた合成転写因子 コロンビア大学のSamuel H. Sternberg准教授は、「短縮型I-F CRISPR-Casを帯びたトランスポゾンを利用することで、DSBを介さず大腸菌ゲノム標的サ …
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[注] 地球の限界(惑星限界 / プラネタリー・バウンダリー / planetary boundaries) 海洋酸性化(ocean acidification)は、プラネタリー・バウンダリー・フレームワークにおいて、容認できない環境変化をもたらす境界に近づいている [右図右下参照]。英・米・スロベニアの …
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 網膜色素変性症などの遺伝性網膜疾患(IRD)は、光受容体の変性を特徴とする多様な遺伝性眼疾患群である。IRDは、高所得国の労働年齢人口における失明の主な原因であり、急速に進化するCRISPR/Cas9技術を含む、拡大を続ける遺伝子編集ツールキットの理想的な標的である。  …
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[注] Casgevy (CTX001) は、患者由来の造血幹細胞において、体外で、胎児型ヘモグロビンの発現を抑制する転写因子BCL11Aの遺伝子をCRISPR/Cas9でKOした上で、患者に移植する(自家移植する)。これによって、成人になって自然に失われてしまう胎児型ヘモグロビンの発現を復 …
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 抗生物質耐性は世界的に重大な健康問題であり、中でも、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が肺炎と敗血症を引き起こす主要な病原体である。韓国の研究チームが今回、、これらの病原体の空気感染を防ぐために設計されたオンサイトでの …
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- Eric Topolによる最新の加齢関連研究論文4編をベースとする総説 免疫システムと炎症プロセスは密接に絡み合っており、加齢の影響を受けることは周知の事実である。「免疫老化(immunosenescence)」と「炎症性老化(inflammaging)」という用語は、このことを反映した造 …
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背景CAR (キメラ抗原受容体)-T細胞療法は、血液がんの治療において顕著な成功を収め、固形がんへの展開が模索されている。より強力でより安全なCAR-T細胞の作出に向けて、CRISPRゲノム編集技術が期待されているが、腫瘍へのホーミング効率の低さや正常組織における治療関連毒 …
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 ファージと細菌は分子レベルでの軍拡競争を繰り広げている。ファージでは、細菌の免疫システム(防御システム)からの回避を可能とするタンパク質(Ant-Defence Proteins: ADPs)を備えている。EBIを主とする英国・欧州の研究チームは今回、ADPsに関する情報へのアクセスを …
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 口腔扁平上皮癌(Oral Squamous Cell Carcinoma: OSCC)は、その複雑な分子構造と代謝適応性のために、依然として治療上の課題となっている。中国の山西医科大学の研究チームは今回、CRISPR/Cas9を用いた全身ノックアウト(KO)マウスを用いて、プロテオーム解析とトランス …
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2025-06-12 初稿で紹介したNature Biotechnology 誌刊行論文の共著に研究者が入っていたSNIPR BIOME社が、SNIPR001の第Ib相試験において、最初の患者への投与を開始したことを発表した。 この第Ib相試験(NCT06938867)は、造血がん患者24名を対象 [*]に、経口投与SNIPR001 …
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2025-06-12 Nature 誌刊行論文としての書誌情報を以下に追記:bioRxiv投稿から論文タイトルの書き振りが変更されたが、同義:トランスポゾンから外適応したTnpBホモログは, RNAにガイドされる転写因子として機能する"TnpB homologues exapted from transposons are RNA-guid …
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 アデノシンからイノシンへの(A-to-I)RNA編集は、2つのADARアイソフォーム(p110とp150)とADARB1によって触媒される、遺伝子発現における重要な制御ステップである。興味深いことに、核小体にはADAR p110とADARB1が極めて豊富に存在するが、その生物学的理由は依然として …
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 CRISPR/Cas12aの発見は、遺伝子編集、分子診断、バイオセンシングなど、幅広い分野に革命をもたらしたが、依然として限界や課題に直面している。中国の研究チームは今回、一本鎖DNA活性化因子で修飾された金ナノ粒子(AuNP)が、活性化因子を一対多の関係で強力にロックす …
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 CRISPR/Casゲノム編集技術は、効果的で制御された遺伝子改変を可能にするが、オフターゲット効果が、特に臨床応用において依然として大きな懸念事項である。潜在的なオフターゲット部位(potential off-target sites: OTS)を予測するための実験的およびin silico手法が開 …
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 Cas9, Cas12, Cas13, Base editors, Prime editors, およびBridge RNAについて、モデル図に続いて、発見または創製、機構、オフターゲット活性、ツール、治療薬、関連エフェクターの各項について解説されている。[注] Asimov PressのX投稿を以下に引用This was written by …
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 プライムエディターによる正確な編集は、切断部位に限定されていた。そこで、中国の研究チームは、nCas9-H840AをnCas9-D10Aに置き換えることで、ニッカーゼ切断部位の上流で作用するインバース・プライムエディター(iPE)を開発した [論文Fig. 1参照]。しかし、編集効率が …
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- 華東師範大学のShanghai Frontiers Science Center of Genome Editing and Cell Therapy/薬学部のDali Li教授(上海自然科学アカデミー会員)が率いる研究チームからの報告ミトコンドリアDNA (mtDNA) の変異と疾患 mtDNAの変異は、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、乳酸ア …
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 Tregは、CD4+T細胞のサブセットであり、CD4+T細胞全体の5~10%を占める。免疫寛容と免疫恒常性の維持に極めて重要なTregは、転写因子FOXP3の発現によって、他のCD4+T細胞のサブタイプと区別される。 免疫調節における中心的な役割から、Tregは自己免疫疾患、移植片拒絶反 …
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 CRISPRを介したゲノム編集ツールは、ゲノム内の疾患原因となる変異を修正する上で大きな可能性を秘めているが、臨床応用にあたっては特に、その特異性と精度は徹底的に評価される必要がある。ゲノム全体にわたるオフターゲット効果の検出を目的としたこれまでの実験的アプ …
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[注] 脳内リガンド指向性化学は京都大学の浜地 格教授らが開発してきた脳内の天然に存在する受容体を化学修飾できる手法で、遺伝子操作を必要としない。標的受容体に親和性を有するリガンドと標的受容体に導入したい機能性分子を、反応部位(解離型求電子剤:アシルイミダゾ …
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 エストロゲン受容体陽性(ER+)乳がんには内分泌療法(ホルモン療法)が適用されるが、症例の約半数は耐性化、再発に至る [*1]。その多くは、ニューロフィブロミン1(NF1)の欠損などの体細胞変異が原因である。しかし、このような症例でERを介した増殖が失われる機構が不 …
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 本プロトコルでは、プラスミドDNAのトランスフェクションとCRISPRエピゲノムエディターをコードするmRNAのヌクレオフェクションを用いて、ヒト細胞株におけるプログラム可能な転写抑制のための2つのdCas9ベースのエピゲノムエディター、CRISPRiおよびCRISPRoff [Fig 1参照 …
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 単一反応で複数の核酸標的を同時に検出することが求められるアプリケーションが増えている。このマルチプレックス検出技術は、アッセイに必要な時間と全体的なコストの双方を削減するに至る。 標的部位での活性をプログラム可能なヌクレアーゼであるCRISPR-Casとアルゴノ …
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 比較的小さい領域(100bp〜数MBbp)が数十コピーにまで増える現象である局所的遺伝子増幅(focal amplification)は、多くのがんに見られる特徴であり、腫瘍形成における発がんドライバーとして機能する。がん遺伝子増幅はゲノムの不安定性を促進し、がん細胞の生存と進化 …
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 エンハンサー・エレメントは、遠位の標的遺伝子と相互作用してその発現を調節するが、エンハンサー-プロモーター相互作用の分子機構の詳細は未だ完全には解明されていない。DNAのグアニン四重鎖(G4)についても、3Dクロマチン相互作用と共存することが最近示されたが、エ …
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[注] フェロトーシス(ferroptosis)は、鉄に依存し、過酸化脂質の蓄積によって特徴付けられる「制御されたプログラム細胞死」の一種である。 従来の治療法に対して高度な抵抗性を示すがん細胞は、しばしば、脂質代謝および酸化還元に対する脆弱性を帯びて、フェロトーシス …
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 エンハンサーは、発生中の遺伝子発現プログラムの正確な時空間的実行を保証する重要な遺伝子調節要素である。しかし、最近の研究結果によると、これまでのエンハンサーを同定する方法では、哺乳類ゲノム中の活性エンハンサーの完全なレパートリーを捕捉できない可能性があ …
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 栽培エンバク(Avena sativa L.)は、穀物の中でβ-グルカンと油脂の含有量が高く、脂肪酸組成が独特で、グルテンを含まないという独自の特性が帯び、食用だけでなく家畜飼料としても適している。1870年代以降、エンバクの育種プログラムは、耐病性、収量、製粉品質、β-グ …
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2025-06-09 ブログ記事タイトルに「オフ・ザ・シェルフ免疫療法:」を付加2025-06-06 初稿 再発/難治性T細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)/リンパ腫(LBL)は、依然として大きなアンメット・メディカルニーズを抱えている。WU-CART-007は、健康なドナーT細胞から作製さ …
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 造血幹・前駆細胞(HSPC)における相同組換え修復(HDR)を介した遺伝子編集(GE)のアプローチに、遺伝性疾患の単回あるいは長期間効果が続く遺伝子治療法として期待が寄せられている。しかし、イタリアにカナダとドイツが加わった研究チームが今回、AAV6を介して送達され …
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 選択的スプライシングは、mRNA前駆体を様々な方法で選択的にスプライシングすることでトランスクリプトームの多様性を生み出し、単一の遺伝子から複数のRNAアイソフォームを生成する重要な制御機構である。このプロセスは遺伝子発現の微調整に不可欠であり、様々な生物学的 …
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 GATA転写因子(TF)は、植物において生理学的プロセスの制御に関わる様々な役割を果たしている。トマトにおけるGATA TFの大部分の機能は、未解明のままであるが、SlGATA22 は、低温ストレス条件下で発現が上昇することが明らかになった。 中国の東北農業大學の研究チーム …
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 リボヌクレアーゼH(RNase H)は、DNA複製、損傷応答、自己修復など、ゲノム安定性の維持に関与する人体に必須のリボヌクレアーゼである。中国の研究チームが今回、RNase H活性の超高感度検出を可能にするシステムを開発した。 ここでは、crRNA / DNA(CD)キメラ二本鎖プ …
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