crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

1.[レビュー] CRISPR技術によるシアノバクテリアの代謝工学
  • [出典] "CRISPR-Based Technologies for Metabolic Engineering in Cyanobacteria" Behler J, Vijay D, Hess WR, Akhtar MK. Trends Biotechnol 2018 Jun 21.
  • CRISPR/Cas9とCRISPR/Cas12aによって、シアノバクテリアの遺伝子置換、マーカーレス点変異、および遺伝子ノックアウトとノックインの多重化が効率的に実現された;CRISPRiによる内在遺伝子の発現抑制により、競合パスウエイのフラックスを低減して目的とする化合物産生へとフラックスを向けることも実現された。
2.CRISPR-Cas9のエレクトロポレーションによるRalstonia eutropha H16のゲノム編集
  • [出典] "Genome editing of Ralstonia eutropha using an electroporation-based CRISPR-Cas9 technique" Xiong B, Li Z, Liu L, Zhao D, Zhang X2,3, Bi C. Biotechnol Biofuels. 2018 Jun 20.
  • Ralstonia eutropha H16水素細菌の一種であり、バイオプラスチックの産生や遺伝子組み換えによるブタノール産生などで関心を集めている。
  • CRISPR-Cas9のR. eutrophaへのCRISPR-Cas9のエレクトロポレーションが制限修飾(restriction-modifcation:RM)系による制約を受けることを見出した。
  • REBASEの参照およびE. Coli MG1655との比較からRM系に関与する5種の制限酵素遺伝子を推定し、そのノックアウト実験を行い、H16_A0006H16_A0008-9のノックアウトによりエレクトロポレーションの効率がそれぞれ1,658倍と4倍へと向上することを見出した。
  • また、果糖によりアラビノース誘導性BADプロモーターのリーキーな発現を抑制することでcas9発現を最適化し、相同組換えを介した遺伝子編集を実現し、5種類の遺伝子の編集を78.3~100%の効率で実現した。
  • CRISPR-Cpf1とNHEJを介した遺伝子編集は実現しなかった。
3.[レビュー]CRISPR-Casシステムによるファージ遺伝子工学
  • [出典] "Phage Genetic Engineering Using CRISPR⁻Cas Systems" Hatoum-Aslan A. Viruses. 2018 Jun 19.
  • ファージ遺伝子のほとんどの機能が未解明である;CRISPR-Casによるファージ・ゲノム工学 (タイプI (Cas3)、Ⅱ (Cas9)、Ⅲ (Cas10);研究事例をまとめたテーブルあり (Table 1)
4.[レビュー] TALENsやCRISPR/Cas9を利用した新育種技術によるジャガイモの品種改良
  • [出典] "Applications of New Breeding Technologies for Potato Improvement" Hameed A, Zaidi SS, Shakir S, Mansoor S. Front Plant Sci 2018 Jun 29.
  • TALENやCRISPR/Cas9を利用した外来遺伝子を含まず精密、迅速かつ効率的な遺伝子編集が可能になり、また、ジャガイモのゲノムが解明され、効率的な形質転換技術が開発されたことによって、ジャガイモの遺伝子工学が大きく進展した(下図は、レビューから引用したFig.1)。
Potato NBT
  • ジャガイモの生産性と品質に対する制約;栄養素含有量の増量;栄養阻害物質・毒素の抑制;新たな育種技術;GMジャガイモの商品化 (リスク評価と規制、一覧表あり)
5.CRISPR/Cas9システムのヤマノイモDioscorea zingiberensisへの展開
  • [出典] "Application of the CRISPR/Cas9 system in Dioscorea zingiberensis" Feng S, Song W, Fu R et al. Plant Cell Tiss Organ Cult 2018 Jun 23.
  • D. zingiberensisは、ステロイドホルモンの出発物質であるジオスゲニンを産生する薬用植物である。武漢大学の研究チームはアグロバクテリウム形質転換法を介したCRISPR/Cas9により、D. zingiberensisのゲノム編集を初めて実現した。
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット