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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

出典
  • [News & Views] Controlling protein function with HCV protease. Dickinson BC. Nat Methods 2018 Jul 2.
  • [論文] "Chemogenetic control of gene expression and cell signaling with antiviral drugs" Tague EP, Dotson HL, Tunney SN, Sloas DC, Ngo JT. Nat Methods 2018 Jul 2.
  • [論文] "StaPLs: versatile genetically encoded modules for engineering drug-inducible proteins" Jacobs CL, Badiee RK, Lin MZ. Nat Methods 2018 Jul 2.
概要
  • 低分子によって細胞内で外因性あるは内因性「生物部品」を低分子で制御可能にする技術は、新たな生物機能を創出を目指す合成生物学にとって魅力的である。Nature Methods 2018年7月2日発行のNews & Viewsでは、Ngo (Boston U)の研究グループと、Lin (Stanford U)の研究グループがそれぞれ発表したLInC (ligand-inducible connection)とStaPLs (stabilizable polypeptide linkages)の論文をハイライトした。
  • LInCとStaPLsはいずれも、HCV (C型肝炎ウイルス)由来NS3プロテアーゼが切断する配列とNS3プロテアーゼ・ドメインで構成した自己切断リンカーを介して、標的タンパク質と標的タンパク質の活性を亢進あるいは減弱するエフェクター・ドメインとを結合した改変タンパク質複合体システムと、HCVプロテアーゼ阻害剤とで構成されている。
  • これまでに、1990年代のラパマイシン誘導二量体化に始まった化学誘導二量体化 (hemical-induced dimerization  : CIDx)によるタンパク質の局在と活性の制御技術が発展してきた (Wikipediaから引用した下図参照)。CID
  • しかし、CIDは「低分子による二量体化に限り活性化し、低分子非存在下での活性を最小限に止める」最適条件の絞り込みが容易ではなく、また、安定な制御もまた容易ではないという大きな問題を抱えている。
  • 安定しかつ精度の高い低分子誘導性制御システムの探索は今回、HCV療法として研究開発が進んできた極めて選択性が高くかつ強力なHCVプロテアーゼ阻害剤  によって報われた。これまでに、HCVプロテアーゼの「ヒト細胞に存在せず特定のアミノ酸配列を特異的かつ予測可能な様式で切断する」特徴を活かして、エピトープタグを組み合わせた新生タンパク質の動態の可視化 (TampSTAMP)、デグロンを組み合わせた可逆的タンパク質生産調節 (SMAsh)などが実現されてきたが、LInCとStaPLsはシンプルなプロセスで精密なタンパク質の操作を実現した。
LInC
  • [阻害剤存在下で転写活性化するTURN-ONシステム] DNA結合ドメイン(DB)と転写活性化因子(TA):Gal4_DBとGal4_TAをNS3リンカーで結合し、UAS-H2B-Citrineをレポーターとして、種々の阻害剤の付加によって転写が活性化し、阻害剤非存在下では転写が活性化されないことを確認;TAとして、VP64、VP64-p65またはVPRを利用することでより低い阻害剤レベルでより強力に転写を活性化;rTetR-NS3-VP64-p65のコンストラクトを利用することで、ドキシサイクリンとNS3阻害剤の双方の存在下 ('AND')での転写活性化;阻害剤を除去することで、DB-NS3-TAのコンストラクトの分解そして転写不活性化実現
  • [阻害剤存在下で転写不活性化するTURN-OFFシステム] 膜局在ドメイン(TMD)と転写因子 (TF):BFP-TMD-NS3-Gal4min-mCherryのコンストラクトで実験し、阻害剤存在下ではGal4minが自己切断リンカーを介して細胞膜に係留されて転写不活性に到り、阻害剤非存在下ではTFが核に移行し転写活性化へ
  • TURN-ONとTURN-OFFの組み合わせ:rTetR-NS3-VP64-p65とTMD-NS3-Gal4minを組み合わせ、単一阻害剤でON-OFFの同時制御を実現
  • dCas9-VPRとの相性:dCas9をDNA結合ドメインとして転写活性化ドメインVPRを結合したdCas9-NS3-NLS/VPRにより、dCas9の阻害剤非存在下でdCas9の細胞質局在と転写不活性を誘導、阻害剤存在下で内在遺伝子発現を制御dCas9とVPRを介した転写亢進
  • Notchリガンドの一種でありⅠ型膜貫通糖タンパク質Dll1の細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間にNS3自己切断リンカーを挿入する事で、阻害剤による細胞間Notchシグナル伝達ひいては細胞死への誘導を調節
StaPLs
  • 異なる阻害低分子に感受性を示す2種類のHCVプロテアーゼ変異体に基づく互いに直交するStaPlsを開発し、GFPおよび2種類のヒト・タンパク質で検証し直交性を確認
  • 遺伝子座特異的ジンクフィンガー結合ドメインに転写活性化または転写抑制ドメインを結合することで、低分子で転写を制御可能な因子を作出
  • 血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)の抑制と活性化の双方向制御を実証
  • VPR-dSpCas9 (StaPL):StaPLをdCas9の非構造ループに挿入することで、阻害剤存在下でのみ機能するdCas9転写活性化システムを構築
  • StaPLd-Casp9:カスパーゼ9の二量体化・活性化をNS3プロテアーゼ阻害剤で調節ひいては細胞死への誘導を制御可能に
まとめ
  • LInCとStaPLsは、設計も構築も簡明であることに加えて、細胞に内在するタンパク質分解機構や輸送機構に依存しないことから、再現性が高い技術であり、また、多様な種類の細胞に展開可能である。
  • 2論文にあるように、CRISPR-Cas9によるゲノム編集と遺伝子発現調節への組み込みが可能である。
  • 特定の疾患に対して認可された阻害剤を利用する以上、オフターゲット作用には留意する必要があるが、細胞医療の安全性や操作性の向上に貢献することが期待される。
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