[出典]"Trial of ‘kick and kill’ approach to HIV cure leaves puzzles to be solved" Wighton K. Imperial College London. 2018 Jul 24.
- 抗レトロウイルス剤療法(Antiretroviral Therapy, ART)は、ほとんどのHIV患者で、投与開始後数ヶ月で血中のウイルス量が検出限界以下まで減少し、非感染者と同じような生活を送ることが可能になる。
- しかし、ATRは終生日々継続する必要がある。ATRを中止すると血中のウイルス量が検出限界を超えて増加するからである。
- HIVは、少数の静止状態の免疫細胞CD4T細胞(リザーバー細胞)にプロウイルスとして宿主ゲノムDNAに組み込まれ、ATRに認識されない状態で長期間休眠状態でリザーバー細胞に潜在し、再び増殖する可能性を秘めている。そこで、リーザーバー細胞で休眠しているHIVを活性化した上でATRや宿主免疫応答で攻撃する療法、'kick & kill' (または、'shock & kill')、が考案された。
- 英国では2015年から2018年にかけて、'kick & kill'療法の初のランダム化臨床試験RIVER* studyが実施され、その結果が2018年7月24日にアムステルダムで開催された第22回国際AIDSコンファランス(AIDS 2018)で報告された。
- *) RIVERは‘Research In Viral Eradication of HIV Reservoirs’に由来する。
RIVER studyの4ステップ (解説ビデオ〜4分 https://vimeo.com/181012372)
- ATR処方によりHIV非検出の状態へ
- 2種類の抗HIVワクチン(ChAdV63.HIVconsvとMVA.HIVconsv)からなるプライムブースト(prime boost)により、'kick'される細胞を認識するように免疫システムを教育
- ボリノスタット(商品名ゾリンザ) によりリザーバー細胞を'kick' (ボリノスタットはヒストン脱アセチル化酵素を阻害する認可薬であり、先行研究で'kick'効果が報告されている )
- ワクチンでブーストされた免疫システムが、活性化された細胞を'kill'
- 2015年12年からボランティアの募集を開始し、結果的にコホートは60人のHIV感染者(男性)の規模に
- 'kick & kill'療法は通常のATR療法を超える効果を示さなかった。
- 一方で、'kick & kill'の各ステップは想定通りに機能・作用した。そこで、各ステップの'強度’ひいてはワクチンや薬剤の組み合わせを調節することが考えられる(例えば、休眠HIVを、ワクチンで教育した免疫システムが容易に認識できるレベルまで活性化可能な薬剤の選択あるいは開発など)。
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