1. BE(1塩基編集)とTarget-AIDによりマウスPsen1遺伝子に 病原性変異を誘導
- [出典]"Introduction of pathogenic mutations into the mouse Psen1 gene by Base Editor and Target-AID" Sasaguri H [..] Saido TC. Nat Commun 2018 Jul 24.
- 家族性アルツハイマー病(fAD)の病因変異として、200種類を超えるプレセニリン1 (PSEN1)変異と、50種類を超えるアミロイドβ前駆体タンパク質遺伝子(App)変異が知られている。これらのほとんどがミスセンス変異であるが、各変異がどのように遺伝子機能を改変するかは同定されていない。ヒト遺伝子疾患の病因追及にはモデル動物での変異導入実験が有用である。
- 理研と医科歯科大の研究チームは今回、BE3または植物やゼブラフィッシュ での1塩基編集が実証されてきたTarget-AIDのmRNAを同一のsgRNAと共にマウス受精卵にマイクロインジェクションし、in vivoでの編集効率を比較した。
- BEとTarget-AIDの編集効率はそれぞれ10.0–62.8%と3.4–29.8%とBEが優ったが、一方で、BEはTarget-AIDよりも高頻度で予期せざる塩基の置換*と挿入/欠失をもたらした(* Psen1-P436Sの生成を目的とするsgRNAから-P436Sの他に-P436L/-P436F/-P436H/-I437M/-S438Fの置換や二重置換)。Appを標的とする編集の効率もBEが優った。
- さらに、Cas9をCas9 VQR (D1135V, R1335Q, and T1337R)変異体に置換したBE3 (Kim YB et al. Nat Biotechnol 2017)を利用してPsen1-P117の変異-P117S, -P117LなどのfAD病因変異の誘導も実現した。
- BEまたはTarget-AIDで作出したPsen1変異マウスは、Aβ42/Aβ40比の上昇など変異Psen1をノックインしたマウスが呈した表現型を再現した。
2. 毒性バクテリオファージの広範な抗-CRISPRタンパク質が、一連のCas9タンパク質を阻害する
- [出典]"Widespread anti-CRISPR proteins in virulent bacteriophages inhibit a range of Cas9 proteins" Hynes AP [..] Moineau S. Nat Commun 2018 Jul 25.
- [構造 下図参照]PDB 6EYY Anti-CRISPR AcrIIa6 cubic form (2.5 Å);PDB 6EYX Anti-CRISPR AcrIIa6 tetragonal form (1.96 Å)

- CRISPR-Casシステムはバクテリアの抗ウイルスシステムであり、バクテリアウイルス (バクテリオファージ, ファージ)は抗-CRISPR(anti-CRISPR, Acr)タンパク質を備え、バクテリアの免疫システムを回避する。Acrsは、CRISPRによるゲノム編集の微調整に利用可能である。
- Acrsは、CRISPRを帯びた宿主において休眠状態を保つファージ(溶原化ファージ)に広く認められるが、毒性ファージでAcrsのオーソログが認められるのは稀であった。
- カナダLaval大、フランスAix-Marseille大ならびにDuPont Nutrition and Healthの研究グループは今回、Streptococcus thermophilusファージ254種類(大部分が毒性ファージ)帯びているAcrsを探索し、新たなAcr、AcrIIA6、を同定した。
- 毒性ファージの38%がAcrIIA5またはAcrIIA6を帯び、溶原化ファージは全てどちらかのAcrを帯びていた。
- AcrIIA6と同じくS. thermophilus由来のAcrIIA5およびL. monocytogenesプロファージ由来のAcrⅡA2とAcrⅡA4と共に、バクテリアとヒト細胞における活性を測定・比較し、AcrIIA5とAcrⅡA6の双方が、ヒト細胞においてSpCas9の活性を阻害することを見出した(下図 Table 1参照)。

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3. バイクテリアがファージから獲得する個々のスペーサーのターンオーバーと微生物集団におけるスペーサーの配列(タイプ)分布の変動モデル
- [出典]"How adaptive immunity constrains the composition and fate of large bacterial populations" Bonsma-Fisher M, Soutière D, Goyal S. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jul 23.
- バクテリアは、高密度状態においてはクオラムセンシングを介して集団としての免疫応答と、CRISPR/Cas活性のコストのバランスを取っていることが示唆されている (crisp_bio記事'クオラムセンシング(quorum sensing; QS)が多重なCRISPR/Casシステムの調節を介して獲得免疫反応を制御する')。
- トロント大学の研究チームは今回、バクテリアにおけるバクテリオファージからのスペーサの獲得と維持の確率モデルを構築し、クオラムセンシングの元で、個々のスペーサー・タイプのターン・オーバーが速いが、微生物集団としてはバクテリオファージのチャレンジから比較的短期間でスペーサのrank-abundance分布は安定になりその状態が継続するという結論に至った。このモデルは、先行研究 (Paez-Espino et al. Nat Commun 2013)のStreptococcus thermophilusにバクテリオファージを感染後、15日間にわたり追跡したスペーサ配列/タイプの動態と一致した(下図は、Paez-Espinoらの論文Figure 3:特定のCRISPRアレイにおいて豊富なスペーサの相対量の日変動)。

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4. 欧州連合司法裁判所、「遺伝子編集で作出した作物もGMO (遺伝子組み換え作物)である」と裁定
- [出典]"Gene editing is GM, says European Court" BBC News 2018 Jul.; "Organisms obtained by mutagenesis are GMOs and are, in principle, subject to the obligations laid down by the GMO Directive" Court of Justice of the European Union 2018 Jul 25.
- 欧州連合司法裁判所 のConfédération paysanne (フランス農民同盟)などからの「除草剤耐性作物は作製法のいかんにかかわらず環境リスクを伴う」という主張に対する裁定:いかなる手法であろうと変異導入により作出された作物はGMOである。ただし、特定の変異導入法(those which have conventionally been used in a number of applications and have a long safety record)で作出されたGMOは、GMO Directiveの規制対象外である ('the mutagenesis exemption’)。
- 2018年1月に発表されたMichal Bobek EU法務官(advocate-general)の見解とは不整合:(CRISPRなどの)新しい技術による標的変異導入は、長い歴史のある放射線や化合物による変異導入や交配を介した変異導入と同様に、従来のGMO規制における'the mutagenesis exemption’に該当する。
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