1. CRISPR-Cas13aシステムではRNA結合とHEPNヌクレアーゼの活性化は互いに独立
[出典]"RNA Binding and HEPN-Nuclease Activation Are Decoupled in CRISPR-Cas13a" Tambe A, East-Seletsky A, Knott GJ, Doudna JA, O'Connell MR. Cell Rep. 2018 Jul 24;24(4):1025-1036.

 CRISPR-Cas13aヌクレアーゼは、RNAにガイドされ、RNAに活性化されるリボヌクレアーゼ(RNase)であり、すでに、RNA検出、RNA可視化、およびRNA調節の強力なツールとされているが、標的RNAの結合と、ヌクレアーゼ・ドメインであるHEPN (higher eukaryotes and prokaryotes nucleotide binding)の活性化との相関関係はほとんど解明されていなかった。
 UC  BerkeleyのDoudnaとRochester Uの.O’Connellらの研究チームは今回Leptotrichia buccalis(Lbu)由来Cas13aについて、crRNA (ガイドRNA)と標的RNAの間のミスマッチの数と位置が、標的RNAへの結合親和性とHEPN活性 (標的切断活性)に及ぼす影響を、配列解析と、crRNAのライブラリにHEPNヌクレアーゼを不活性化したdCas13aを組み合わせたin vitro実験解析によって分析した。
  • 結合親和性は、crRNAスペーサーの塩基配列の9-12 (シード領域)におけるミスマッチによって著しく低下するが、その他の領域でのミスマッチは結合親和性に僅かな低下をもたらすに過ぎず、例えば5-8の領域でミスマッチが起きても中程度以上の結合親和性が発生する。
  • 一方で HEPNの活性化は、5-8領域におけるミスマッチによって抑制される。
  • したがって、5-8領域でのミスマッチは、Cas13aが結合するが標的を切断しないモードを作り出せる。また、その他の領域において、結合親和性は低いがRNase活性を最大化にする調節が可能である。
2. E. coliのCRISPR/Cas9 RNPを1ステップで直接精製
[出典]"Direct purification of CRISPR/Cas ribonucleoprotein from E. coli in a single step" Lin S,  Qiao J, Ma L, Liu Y. bioRxiv 2018 Jul 26.
  • 極めて親和性が高いCL7/Im7 精製システムを利用して、ゲノム編集への有用性が認められてきたCas9およびCas12aのRNPを、低コストで大規模に作出する手法を確立。
3. Staphylococcus aureus38株における57のCRISPR遺伝座の特徴
[出典]"Study the Features of 57 Confirmed CRISPR Loci in 38 Strains of Staphylococcus aureus" Zhao X, Yu Z, Xu Z. Front Microbiol 2018 Jul 26.
  • S. aureusのほとんどは単一のCRISPR遺伝子座を帯び、各CRISPRアレイは保存性の高いダイレクトリピートと、多様なスペーサーで構成されていた。加えて、ダイレクトリピートは全て安定なRNA二次構造を形成可能であり、スペーサーの配列は外来ファージまたはプラスミド由来であり、スペーサー配列の特異性に基づいたジェノタイピングが可能であった。S. aureus38株のCRISPRシステムは3種類のサブタイプに分類され、cas遺伝子を伴うCRISPR遺伝子座は4種類であった。
4. Cas9 RNP複合体の直接的自己集合を介したシンプルなin vivo 遺伝子編集による癌療法
[出典]"Simple In Vivo Gene Editing via Direct Self-Assembly of Cas9 Ribonucleoprotein Complexes for Cancer Treatment" Kim SM, Shin SC, Kim EE, Kim SH, Park K, Oh SJ, Jang M. ACS Nano 2018 Jul 20.
  • RNPをエレクトロポーレーションあるいは脂質やカチオン性媒体で送達する手法に替えて、合成crRBA:tracrRNAハイブリットと三者複合体を自律的に形成する多能性Cas9融合タンパク質、Cas9-LMWP、を開発。Cas9-LMWPはNLSと低分子量の強塩基性タンパク質プロタミン (LMWP)を伴っており、標的細胞へのCas9 RNP複合体の送達を自身で実現;肺癌におけるKRAS遺伝子編集で実証
5. 脂肪酸産生の亢進を目的とするCRISPR-Cas9システムによるS. cerevisiaeの代謝工学
[出典]"Metabolic engineering of Saccharomyces cerevisiae by using the CRISPR-Cas9 system for enhanced fatty acid production" Kim DH, Kim IJ, Yun EJ, Kwak S, Jin YS, Kim KH. Process Biochem 2018 Jul 19.
  • TCA回路のイソクエン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子IDH1/IDH2を破壊し、アルカン資化性酵母の一種Yarrowia lipolytica由来のATPクエン酸リアーゼ(ATP citrate lyase)遺伝子ACLを導入し、細胞質でのアセチルCoA産生を亢進することで、脂肪酸産生効率を向上
6. マイクロRNA前駆体 (pri-miRNA)を精密に標的するsgRNAsの同定
[出典]"Assessing abundance and specificity of different types of sgRNA targeting miRNA precursors. Liu HL, Shen Y, Gao Y, Zhou L, Han XS, Zhao CZ, Yang GJ, Chen YL, Yang H, Xie SS. Yi Chuan 2018 Jul 20.  [in Chinese]
  • 研究チームが開発していたCRISPR-offinderを利用して、28,645種類のpri-miRNAsを標的とする11タイプのsgRNAの量と選択性を解析し、ブタ細胞株においてmiR-302/367クラスタのノックアウト効率を測定し、8タイプのsgRNAsを同定し選択性を評価;CRISPR/Cas9レンチウイルスによりmiRNAのノックアウト効率40%を達成
7. TALENを介したマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)によって、部位特異的外来遺伝子ノックイン家畜を作出
[出典]"Production of microhomologous-mediated site-specific integrated LacS gene cow using TALENs" Su X [..] Zhang Y, Zhang L. Theriogenology 2018 Jul 20.
  • 乳糖不耐性への対応を目指して、TALEN遺伝子ノックイン技術、体細胞移植および胚移植を組み合わせて、超好熱性アーケアSulfolobus solfataricus由来の乳糖分解酵素遺伝子LacS遺伝子ノックイン乳牛を作出。
8. Plasmodium yoeliiマラリア原虫ガメトサイトの二重蛍光標識
[出典]"Generation of Plasmodium yoelii malaria parasite carrying double fluorescence reporters in gametocytes" Liu C, Li Z, Jiang Y, Cui H, Yuan J. Mol Biochem Parasitol 2018 Jul 21.
  • Plasmodium falciparumP. bergheiマラリア原虫で実現されているように、P. yoeliiにおいても、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を利用して、ccp2::mCherry (雌)とDhc1::gfp (雄)のガメトサイトからなる二重蛍光レポーターを帯びたクローンを作出し、ガメトサイト生物学とマラリア感染の研究資源とした。
9. [特許]植物のDNAウイルスに対する抵抗性を高めるCRISPR/Cas9システムの構築と利用
[出典]"Method for increasing ability of a plant to resist an invading DNA virus" US20180195084. Inventors: Gao C, Ji X, Zhang H. Assignee: Institute of Genetics and Developmental Biology CAS.