[出典]"Altered p53 functionality in cancer-associated fibroblasts contributes to their cancer-supporting features" Arandkar S [..] Oren M. PNAS 2018 Jun 19 (Published online Jun 4).

背景
  • 癌発生の初期には、腫瘍微小環境における正常な線維芽細胞(normal fibroblasts, NFs)は、腫瘍の成長を抑制し組織の恒常性を維持する機能を帯びている。また、NFs中のp53遺伝子は、腫瘍促進因子群の産生と分泌を阻害し、腫瘍抑制因子として機能する。
  • 癌の進行とともに、癌細胞に隣接するNFsは、癌の進行を促進する癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblasts; CAFs)へと'教育(education)'される。癌抑制遺伝子の代表であるp53は癌細胞で高頻度に変異することが知られているが、CAFs内のp53は変異を帯びていないことが定説になっている。一方で、CAFs内のp53が機能不全に陥っていることも知られている。
成果
  • イスラエルWeizmann研究所とドイツIKPの共同研究チームは今回、驚くべきことに、CAFsにおけるp53は、癌抑制機能を抑制されるだけでなく、転写リプログラミングを介してCAFsの癌促進性の一翼を担う癌促進遺伝子へと転換することを見出した。
  • CAFs p53は、in vitroで腫瘍細胞の移動と浸潤を促進。
  • CAFs p53は多くの癌促進性(CAFness)遺伝子の発現を上方制御し、また、抗癌剤耐性をもたらす因子の分泌を誘導。
  • H460ヒト非小細胞性上皮性肺癌細胞およびp53を伴うまたはp53を欠いたNFsとCAFsを移植したSCIDマウスにおいて、CAFs p53が癌増殖を亢進。
  • NFsを癌細胞を共培養すると、p53に依存するトランスクリプトームが、CAFsのトランスクリプトームに部分的に類似。
展開
  • 腫瘍微小環境内で'教育(education)'されたp53を再教育(re-educate)'する癌療法が考えられる。