1. [ミニレビュー]Cas9によるDSBからの修復に、網膜芽細胞腫関連タンパク質RBが介入する
  • [出典]"[MINI REVIEW]Potential Roles of the Retinoblastoma Protein in Regulating Genome Editing" Jiang Y, Chu WK. Front Cell Dev Biol 2018 Jul 31.
  • CRISPR/Cas9が誘導するDNA二重鎖(DSB)の修復過程であるHRとNHEJのまとめ (参照: 下左図Figure 1と下右図Figure2)
RB1 RB2
  • RB (Rb1遺伝子)の多様な機能(転写抑制、細胞周期調節および細胞増殖調節の機構、miRNAによるRBの調節、ゲノム不安定化と異数性の抑制)、そしてRBの不活性化がDSBs蓄積をもたらすことを指摘
  • 下図Figure 3にあるように、RBが他の因子と複合体を形成してNHEJとHRの双方の調節に関わるとする報告を紹介。RB3
  • RB関連crisp_bio記事:CRISPR関連文献メモ_2016/10/26  2. アフリカツメガエルから網膜芽細胞腫モデル動物を作出
2. DSB修復において、プログラム可能なCRISPRa/iにより、NHEJ抑制とHDR促進を、単一の活性Cas9で実現
  • [出典]"Programmable DNA repair with CRISPRa/i enhanced homology-directed repair efficiency with a single Cas9" Ye L [..] Chen S, Han F. Cell Discov 2018 Jul 24.
  • Cas9が誘導するDSBからの修復において、エラープローンなNHEJに対してエラーフリーHDRを亢進するために、NHEJ因子の化合物またはRNAiによる抑制、低分子によるHDR因子の活性化、細胞周期と同調させたCRISPR複合体の送達といった工夫が試みられてきたが、いずれも、効果が顕著では無いまたは安定しない一方で、多くの課題を抱えていた。
  • 浙江大学とイェール大学医学大学院の研究チームは今回、触媒活性を伴わないガイドRNAs (catalytically dead guide RNAs: dgRNAs)を組み入れることで、dCas9を組み合わせることなく単一の活性Cas9によるCtIP、CDK1、KU70、KU80およびLIG4といったNHEJとHDR関連因子の転写抑制(CRISPRi)と転写活性化(CRISPRa)を可能にし(dgRNA-CRISPRa/iシステム)、CRISPRゲノム編集におけるHDRの顕著な亢進を達成した(下図 Fig.4-d模式図参照:左から右へ、dgRNA-CRISPRi、gRNA-Cas9、dgRNA-CRISPRa)。
CRISPRi:a HDR
  • CRISPRi/aによる各因子およびその組合せの転写抑制・活性化効果を評価した結果、CDK1の活性化とKU80の抑制の同時制御がHDR亢進にもっとも効果的であることを同定した (上図 Fig.4-a CDK1活性化プラスミドの構成;Fig.4-b HEK239T細胞におけるCas9の発現 -> dgCDK1レンチウイルス導入 -> HDR用ドナー導入)。
  • dgRNA-CRISPRa/Iシステムは、ドキシサイクリン誘導型にし、ウイルスにパッケージすることで、エラーフリーな遺伝子編集に基づくヒト遺伝子治療の有用なツールとなる。