1. CRISPR-Cas9による「切り貼り」でS. cerevisiaeの染色体16本を1本または2本へと再構成

[出典] "NEW & VIEWSYeast chromosome numbers minimized using genome editing" Liti G. Nature 2018 Aug 1
Shaoら中国科学院の研究チーム*とLuoらNYU Langone Health**が互いに独立に、16本の染色体をそれぞれ1本と2本の染色体に再構成した2論文を紹介
  • *) "Creating a functional single-chromosome yeast" Shao Y [..] Zhao G, Zhou JQ, Xue X, Qin Z. Nature 2018 Aug 1
  • **) "Karyotype engineering by chromosome fusion leads to reproductive isolation in yeast" Luo J, Sun X, Cormack BP, Boeke JD. Nature 2018 Aug 1.
  • いずれもCRISPR-Cas9により、2本の染色体のそれぞれの一端のテロメアを削除しかつ2本のうち1本の染色体のセントロメアを削除し、S. cereviseae内在の相同組み換え修復機構で1本の染色体へと再構成する手法を繰り返すことで実現 (下図参照:ツイートからの引用)。
  • 染色体本数(n)の'圧縮度'が異なった原因は不明であるが、染色体融合の順や染色体の向きの違いや偶然誘導された変異に由来することが想定される。
  • 野生型と比較して、遺伝子構成は少数の必須遺伝子を除いてほぼ同等であり、セントロメア削除により染色体間相互作用は大きく変動するが染色体内相互作用の変動および転写活性も大きくは変動しない。
  • 細胞の成長もほぼ同等であるが、ストレスに対する適応度は低下(n=1はn=16に対して細胞競合において極めて劣性、Shaoら)
  • 有性生殖への影響:生成された酵母は半数体;野生型よりも効率は低いが有性生殖可能;染色体の本数が異なるS. cerevisiaeとの間では、染色体の本数の違いに依存した生殖的隔離が発生 (Luoら)。
2. CRISPR-Cas12aがCas9よりも高精度な遺伝子編集を実現する分子機構を解明
  • [出典]"Kinetic Basis for DNA Target Specificity of CRISPR-Cas12a" Strohkend I [..] Russell R. Mol Cell. 2018 Aug 2. (bioRxiv 2018-006-26)
  • Cas12aがミスマッチをCas9よりも厳密にチェックすることで高精度な遺伝子編集を実現することが、定量的動態解析により明らかにされた;2018年6月26日bioRxiv投稿論文に相当 (参照 CRISPRメモ_2018/07/02 5. CRISPR-Cas12aの標的DNA特異性が因って来たる速度論的基礎)
3. ゼブラフィッシュ卵巣における卵母細胞in vivoゲノム編集
  • [出典]"The genetic program of oocytes can be modified in vivo in the zebrafish ovary" Wu X, Shen W, Zhang B, Meng A. J Mol Cell Biol. 2018 Jul 28.
  • 卵母細胞は母体の卵巣内で成熟する。卵巣内で未成熟な卵母細胞の遺伝子操作が可能か否かこれまで不明であった。清華大学の研究チームは今回、ゼブラフィッシュにおいて、卵母細胞へのin situマイクロインジェクション(Oocyte microinjection in situ, OMIS)とCas9/gRNAsまたはアンチセンスモルフォリノオリゴによる遺伝子編集を実現した。