[出典]"Engineering of Primary Human B cells with CRISPR/Cas9 Targeted Nuclease" Johnson MJ, Laoharawee K, Lahr WS, Webber BR, Moriarity BS. Sci Rep. 2018 Aug 14.
[crisp_bio 注] 2019-11-22テキスト改訂
概要
  • B細胞は遺伝子治療のツールとして有望である。末梢血から容易に分離でき、増殖が早く、大量の抗体を生産する形質細胞として生体内に存在し続けるからである。したがって、B細胞のゲノム編集は、多様な疾患の治療に新たな道を拓くとともに、ヒトにおけるB細胞の機能解析にも新たな道を拓く。
  • ミネソタ大学の研究チームは今回、PBMC(末梢血単核細胞)に由来するCD19陽性B細胞におけるCD19のノックアウト、標的部位での転座誘導、および、AAVS1セーフ・ハーバー部位へのドナーDNAのノックインを実現した。
詳細
  • PBMCからのCD19陽性細胞のエンリッチメント、CD40LとIL4を介した活性化と増殖を経て、B細胞全体は10倍に、その中で、IgD陽性IgM陽性CD27陰性ナイーブ・サブセットが35%から80%を越す迄に増加した (Figure 1引用の左下図参照)。
B cell B cell 2
  • CD19を標的とする化学修飾sgRNAまたはAlt-R gRNAs と、化学修飾したCas9 mRNAまたはCas9タンパク質との組み合わせを試行し、13種類の条件でエレクトロポレーションを試行し、最適条件を探り当てた(Figure 4引用の右上図Bの下段参照)。
  • B細胞は、エレクトロポレーションを介した核酸送達を、抗原刺激後3日から受容し始め、7日後に受容がピークに達した。
  • 編集後に得られる細胞数も評価した結果、化学修飾sgRNAとCas9タンパク質をRNPとしてエレクトロポレーションする組み合わせを選択した。
  • 今回開発した手法により、70%を超える効率でCD19の遺伝的およびタンパク質ノックアウトを実現した。
  • また、バーキットリンパ腫に見られる転座 t(8; 14)を、MYCIGHをそれぞれ標的とするRNPsの同時送達により再現した。
  • さらにAAVS1セーフ・ハーバー部位を標的とするsgRNAsとCas9タンパク質に加えて、スプライス受容部位-EGFPカセットをコードするドナー・テンプレートをAAV6で送達する事で、部位特異的挿入 (ノックイン)の効率25%を達成した。
  • 今回報告したようなB細胞の遺伝子工学技術には、基礎研究、抗体生産および細胞療法と、広範な応用分野が広がっている。
  • なお、ミネソタ大学の論文執筆中に、ワシントン大学の研究グループから発表された同趣旨の論文が出版された:CRISPRメモ_2017/12/27-1 [第1項] ヒト初代B細胞から特定のタンパク質を分泌するプラズマ細胞を樹立する法 - タンパク質生産プラズマ細胞工場開発