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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1. LoADed PITCh:MMEJを介したノックインシステムPITCh法アップグレード
  • [出典]"Biased genome editing using the local accumulation of DSB repair molecules system" Nakade S [..] Sakuma T, Yamamoto T. Nat Commun. 2018 Aug 16.
  • PITCh法*を開発した研究グループはその後、エクソヌクレアーゼ1 (Exo1)の過剰発現によるノックイン効率の向上を実現していたが今回、MMEJモニタリング・レポーター・アッセイから、CtIP(RB結合タンパク質8; RBBP8)がMMEJを亢進することを見出した。
  • さらに、CRISPR-Casによる転写活性化システムSAMを参考に、sgRNAのステムループにMS2配列を挿入し、MS2コートタンパク質にCtIPを結合することで、CtIPをDSBサイトへ集積する(local accumulation of DSB repair molecules; LoAD)法を開発した(原論文Fig. 1から引用した下図a)参照)。
LoAD system 1
  • PITCh法によってcalnexin(CANX) 遺伝子の終止コドン直前にmNeonGreenをノックインする検証実験で(上図 b)参照)、CtIPおよびそのDSBへの集積がノックイン効率の向上に最も効果的であることを確認した。MS2-CtIP LoADingの効果は、ATP5BPARP1FBLおよびRPL11の4遺伝子でも確認。また、HEK293T、HeLaおよびCHO-K1のいずれの細胞株でも有効。
  • MS2-CtIP LoADed PITCh法により3遺伝子同時ノックインも実現 (原論文Fig. 3から引用した下図参照)LoAD system 2
2. ゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーンにより、ヘルペスウイルス原発性滲出液リンパ腫が依存する遺伝子を同定
  • [出典]"Gene essentiality landscape and druggable oncogenic dependencies in herpesviral primary effusion lymphoma" Manzano M [..] Gottwein E. Nat Commun. 2018 Aug 15
  • カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスを病因とする原発性滲出液リンパ腫 (primary effusion lymphoma; PEL)の適切な療法を見い出すために、8種類のPEL細胞株を対象とするゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーンを実施し、他の癌からのデータも参照することで、PELに特異的な癌関連遺伝子を210種類同定
  • NF-κBとJak/Statシグナル伝達が非必須であるなどこれまでの仮説を否定する結果とともに、ドラッガブルな一連の遺伝子を同定(原論文Fig. 7から引用した下図参照)PEL cell lines
3. HIF2Aレポーターに基づくゲノムワイドCRISPR-Cas9ハイスループットスクリーニング
  • [出典]"Endogenous HIF2A reporter systems for high-throughput functional screening" Zaini MN, Patel SA, Syafruddin SE, Rodrigues P, Vanharanta S. Sci Rep. 2018 Aug 13.
  • 淡明細胞型腎細胞がん(clear cell renal cell carcinoma; ccRCC)において、EPAS1遺伝子にコードされている低酸素誘導因子2 (Hypoxia Inducible Factor 2; HIF2A)が、von Hippel-Lindau 腫瘍抑制遺伝子 (VHL)の変異を介して、活性化・蓄積し、ccRCCCの増殖と転移に関与する遺伝子発現を駆動する。
  • 英国の研究チームは今回、CRISPR-Cas9によりEPAS1遺伝子座に蛍光レポータをノックインし、クロマチン調節因子を標的とするプール型CRISPR-Cas9スクリーンで、HIF2A発現を支持する調節因子を探索した。その結果、ccRCCにおいてHIF2A発現を単独で亢進する必須調節因子は見当たらず、HIF2A遺伝子発現調節機構が冗長であることが示唆された。
4. [レビュー]HIV感染の制御および根絶する免疫薬理学の動向
  • [出典]"Unique natural and adaptive response mechanisms to control and eradicate HIV infection" Amsterdam D. AIMS Allergy Immunol. 2018 Jul 31.
  • CRISPR/Cas9ゲノム編集によるHIV-1療法の試みについても解説(レビューFigure 2から引用した下図参照)HIV
5. バクテリアのクオラムセンシングとCRISPR-Casシステムの相関を理解し、バイオテクノロジーへの活用を考える
 クオラムセンシング関連crisp_bio記事
6. 自家不和合性遺伝子ノックアウトにより二倍体ジャガイモの育種が可能に
  • [出典]NEWS & VIEWS Routes to genetic gain in potato" Taylor N. Nature Plants 2018 Aug 13.;論文 "Generation of self-compatible diploid potato by knockout of S-RNase" Ye M, Peng Z, Tang D, Yang Z, Li D, Xu Y, Zhang C, Huang S. Nature Plants 2018 Aug 13.
  • ジャガイモ生産は四倍体栄養繁殖に依存している。ジャガイモの近交系種子繁殖二倍体作物への改変には、自家不和合性が障害になっていた。中国の研究チームは今回、CRISPR-Cas9システムでS-RNase自家不和合性遺伝子をノックアウトすることで、自家和合性の二倍体ジャガイモを作出し、これまで停滞していたジャガイモ増産への道を拓いた。
7. カイコの新たな雌雄選別法
  • [出典]"Silkworm genetic sexing through W chromosome-linked, targeted gene integration" Zhang Z, Niu B, Ji D, Li M, Li K, James AA, Tan A, Huang Y. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Aug 13.
  • カイコの性染色体は鱗翅類昆虫に見られるメスは異型配偶子性のWZ/ZZ型である。雌雄選別は、養蚕業カイコ飼育に必須であり、また、害虫駆除の不妊虫放飼法の基盤である。
  • 中国と米国の研究チームは今回、TALENとCRISPR/Cas9を利用し、カイコにおいて、TALENを介して生殖細胞特異的nanos(nos)プロモーターで発現するW染色体特異的Cas9を帯びた系統とU6で発現するtransformer 2(tra2)を標的とするsgRNAを帯びた系統とのF1世代で胚性致死に至るシステムを構築した。本手法は養蚕業における新たな雄作出法として有用であり、かつ、不妊虫放飼による害虫駆除にも有用である。
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