[出典]"Restoration of vision after de novo genesis of rod photoreceptors in mammalian retinas"
Yao K [..] Chen B. Nature. 2018 Aug 15.
  • ゼブラフィッシュでは、網膜神経細胞が傷つけられると、ミュラーグリア細胞 (Müller glia, MG)を網膜幹細胞として網膜神経細胞を補充し、視力を回復する。一方で哺乳動物では、MGが自発的に細胞周期を駆動し、網膜神経細胞へと分化する幹細胞または前駆細胞を生成することは無い。
  • しかし、哺乳動物の網膜神経細胞にも再生機構が存在する可能性がある。マウスにおいて網膜損傷がMG増殖を誘起し限定的ではあるが神経発生を促すからである。また、網膜損傷が無い状態でも、マウス網膜へのβ-カテニン遺伝子導入によってMG増殖を誘起した事例も報告されている。
  • マウントサイナイ医科大学、イェール大学、ジャクソン研究所の研究チームは今回、第1段階でβ-カテニン遺伝子導入によりMGの細胞周期を活性化し、第2段階で、桿体細胞への分化を決定づける転写因子遺伝子を導入することで、MGを桿体細胞へとリプログム可能なことを示した。
  • 共焦点レーザスキャン顕微鏡観察により、MGで誘導した桿体細胞が野生型の桿体細胞と同じ構造をとり、網膜内の他の神経細胞とのシグナル伝達を可能にするシナプスを形成することを確認した。
  • さらに、一次視覚野での視覚誘発電位測定から、先天的失明モデルマウスの二重変異体マウス (Gnat1rd17Gnat2cpfl3)において、2段階の遺伝子導入により、網膜から一次視覚野までの視覚神経経路の視覚応答が回復することをin vivoで確認した。