[出典] "Cryo-EM structures of the human volume-regulated anion channel LRRC8" Kasuya G, Nakane T, Yokoyama T [..] Ishitani R, Nureki. Nat Struct Mol Biol. 2018 Aug 20 (bioRxiv 2018-5-25):EMD-6952/5ZSU: Structure of the human homo-hexameric LRRC8A channel at 4.25 Å
背景
背景
- 細胞は細胞外浸透圧に応じて容積を調節ひいては増殖や運動性を調節し、アイソトニック条件での持続的縮小はアポトーシスに至る。この細胞容積の調節は、イオンチャネルやトランスポーター、細胞質キナーゼなどの様々なタンパク質に担われている。その中で、細胞容積感受性塩素チャネル(volume-regulated anion channel, VRAC)は、低浸透圧ストレスに応じた細胞の膨張時に、細胞質からの塩素イオンの流出や細胞外側のオスモライトの放出を促し、同時に水分子を放出することで、細胞容積の恒常性を維持する。この過程は、調節性容積減少(regulatory volume decrease; RVD)と呼ばれ、ほとんどの真核細胞に見られる。
- VRACの機能については、細胞膨張による活性化を始めとして、基質選択性、外向き整流性、不活性化反応などの解析が進んできた。その一方、分子実体については2014年にようやくロイシンリッチ・リピート(LRR)配列を帯びたLRRC8A (leucine-rich repeat-containing 8A)が、VRACに不可欠なタンパク質として同定され、2018年になりヒトとマウスのLRRC8Aの全体構造がクライオ電顕法により解析されるに至った。
概要
- 東大、理研および復旦大の研究チームは今回、クライオ電顕単粒子再構成法により、ヒトのLRRC8A (HsLRRC8A)の構造を平均4.25Åの分解能 (膜貫通領域の局所的分解能~3.8 Å)で決定した。
- HsLRRC8Aはホモ6量体であり膜貫通領域のトポロジーはギャップ結合チャネルに類似している。LRR領域は、15回のロイシンリッチ・リピートからなり、長いアークがねじれた形状をとっている。チャネル・ポアは中心軸に沿っており、細胞外部領域に選択フィルターとなる絞り込みサイト(constriction site)が存在する。絞り込みサイトでは、保存性が高い細胞外ヘリックスの先端に位置する極性荷電アミノ酸が陰イオンおよびその他のオスモライトの透過を支持する
- 今回、2種類のコンフォメーション (compactとrelaxed)を同定し、フレキシブルなLRR領域の剛体運動を介してポアが開く機構を示唆した。
- 下図左は、PDBj万見の「構造の表示-あてはめたモデルとの重ね合わせ」ムービーから画面キャプチャしたHsLRRC8Aの画像に、compactとrelaxedの形状の差異は無視してcompactとrelaxedの各部のサイズを書き込んだもの;下図右は、後述のマウスLRRC8A のX線構造解析PDB登録データから引用したMmLRRC8Aの構造。


他のLRRC8Aの構造解析報告
- 本論文投稿後に、KefauverらScripps研などの米国チームがヒトLRRC8A (HsLRRC8A)のクライオ電顕構造を、DenkaらZurich U.とGroningen U.の研究チームが、HsLRRC8Aと99%の配列同一性を有するマウスLRRC8A (MmLRRC8A)のクライオ電顕構造とX線構造解析の結果を発表した。
- 投稿準備中に原子構造データが公開されていたMmLRRC8Aと今回得られたHsLRRC8Aのコンパクトな構造を比較し、細胞外領域が360Cα原子のrmsdが0.87 Åと一致し、C6対称のチャネル締め付けサイト(channel constriction site)および3回対称のLRR領域も類似していることを見出した。一方で、MmLRRC8Aの膜貫通部位は、HsLRRC8Aの構造をよりタイトでコンパクトした構造に相当した。この違いは、試料調整の違い(NaCl濃度がMmLRRC8AとHsLRRC8Aそれぞれ250 mLと150 mM)によるコンフォメーションを反映したとも考えられる。
Kefauver論文
- "Structure of the human volume regulated anion channel" Kefauver JM, Saotome K, Dubin AE [::] Ward AB, Patapoutian A. eLife. 2018 Aug 10;7.
- EMD-7935/PDB-6DJB: Structure of human Volume Regulated Anion Channel composed of SWELL1 (LRRC8A) (4.4 Å)
Deneka論文
- "Structure of a volume-regulated anion channel of the LRRC8 family" Deneka D, Sawicka M, Lam AKM, Paulino C, Dutzler R. Nature. 2018 Jun;558(7709):254-259. Online 2018-05-16.
- EMD-4366 Cryo-EM density of homomeric mLRRC8A volume-regulated anion channel at 5.01 Å resolution;EMD-4367 Cryo-EM density of full-length homomeric mLRRC8A volume-regulated anion channel at 4.25 Å resolution;EMD-4362 Cryo-EM density of the pore domain of homomeric mLRRC8A volume-regulated anion channel at 3.66 Å resolution;EMD-4361 Cryo-EM density of heteromeric mLRRC8A/C volume-regulated anion channel at 7.94 Å resolution.
- PDB-6FNW:Structure of a volume-regulated anion channel of the LRRC8 family (1.8 Å)
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