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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1. CRISPR/Cas9を介したproximity ligation assay (CasPLA)法を開発し、ミトコンドリアDNAにおけるSNVを可視化
  • [出典]"Direct Visualization of Single-Nucleotide Variation in mtDNA using a CRISPR/Cas9-Mediated Proximity Ligation Assay (CasPLA)" Zhang K, Deng R, Teng X, Li Y, Sun Y, Ren X, Li J. J Am Chem Soc. 2018 Aug 20.
  • ヒトを含む真核生物の一細胞中にはミトコンドリアが多数存在し、そのミトコンドリア一つに多数のミトコンドリアDNA (mtDNA)が存在し、変異したミトコンドリアDNA(mtDNA)と正常なmtDNAが混在し(ヘテロプラスミー/heteroplasmy)、ヘテロプラスミーの比率が一定の値を超えると疾患が発症すると考えられている。このヘテロプラスミーの解析にはmtDNAにおけるSNVの可視化が有力な手段である。
  • 研究チームは今回、それぞれペプチドを結合した2つの分子が近接した際にペプチド同士のハイブリダイゼーションにより合成される核酸を検出するproximity ligation assay(PLA)法にCRISPR/Cas9技術を組み合わせるCasPLA法を開発し、mtDNA SNVの可視化を実現した。
  • CasPLA法によって、ND4遺伝子のSNVを一分子分解能で可視化し、また、細胞膜ナノチューブを介した細胞間でのmtDNAの輸送を観察した(この現象が、mtDNAヘテロプラスミーの拡散機構であることを示唆)。さらに、CasPLAによって核ゲノムにおけるKRAS遺伝子の単一遺伝子座の可視化も実現した。
2. CRISPR/Cas9による広西Bamaミニブタ(Bama Miniature Pigs)のパーキンソン病モデル作出
  • [出典]"CRISPR/Cas9-Mediated Generation of Guangxi Bama Minipigs Harboring Three Mutations in α-Synuclein Causing Parkinson’s Disease" Zhu XX, Zhong YZ, Ge YW, Lu KH, Lu SS. Sci Rep. 2018 Aug 20;8(1):12420.
  • パーキンソン病 (PD)は運動機能障害を特徴とする進行性神経変性疾患であり、α-シヌクレイン免疫陽性の病理と黒質ドーパミンニューロンの脱落を伴う。遺伝性PDの病因としてα-シヌクレイン遺伝子SCNAのミスセンス変異がこれまでに数十同定されており、PD研究の遺伝子改変モデル動物作出の手がかりとなっている。広西大学を始めとする中国の研究チームは今回、生理学的かつ解剖学的にヒトに近いPDモデル・ミニブタを作出した。
  • CRISPR/Cas9によるHDRを介した遺伝子編集と体細胞核移植 (SCNT)を組み合わせて、3種類のPD病因ヘテロ型変異 (E46K, H50QおよびG51D)を帯び、変異α-シヌクレインを発現する広西Bamaミニブタ8匹を得たが、いずれも3月齢ではPD病の症状を示さなかった。今後の長期的観察が待たれる。
 [中国の養豚関連ニュース]中国、アフリカ豚コレラウイルス蔓延対策急務
3. ハンチントン病のマウスモデルと患者の間のギャップを埋めるハンチンチン・ノックイン・ミニブタ 
  • [出典]"Using Huntingtin Knock-In Minipigs to Fill the Gap Between Mouse Models and Patients with Huntington’s Disease" Liu, X., Peng, T. & Li, H. Neurosci Bull. 2018 Aug 20.
  • CRISPR/Cas9遺伝子編集と体細胞核移植は、非齧歯類哺乳類ハンチントン病モデル作出に最適
4. Cas9 D10Aニッカーゼと修復用DNAを介して遺伝子を蛍光標識し、有糸分裂時のEg5、TPX2およびHURPの動態を観察
5. Rscreenorm: CRISPRとsiRNAスクリーンの判定結果の再現性を向上させるためのデータの正規化法
  • [出典]"Rscreenorm: normalization of CRISPR and siRNA screen data for more reproducible hit selection" Bachas C [..] de Menezes RX. BMC Bioinformatics. 2018 Aug 20;19(1):301.
  • 遺伝子に与えた擾乱が誘導する表現型を判定する遺伝子スクリーンでは、スクリーン結果の判定の基準となるポジティブおよびネガディブ・コントロールが必須である。
  • 同じ癌型の異なる細胞株を利用した互いに独立なスクリーン(biological replicate)結果の比較、および、同じ細胞株で実験条件を変えたスクリーン(technological replicate)結果の比較を可能とするデータ正規化の手法rscreenormを開発。
6. [レビュー]遺伝病のゲノム編集療法に必要な非ウイルスin vivoデリバリー法
  • [出典]"REVIEW: Debugging the genetic code: non-viral in vivo delivery of therapeutic genome editing technologies" Piotrowski-Daspit AS, Glazer PM, Saltzman WM. Curr Opin Biomed Eng. 2018 Aug 21.
  • ゲノム編集に必要なヌクレアーゼとオリゴヌクレオチドなどを、脂質やポリマーなどを担体として送達する手法をレビュー
7. DNAバーコードを利用して数千のナノ粒子をin vivoで評価する法
  • [出典]"Testing thousands of nanoparticles in vivo using DNA barcodes" Lokugamage MP, Sago CD, Dahlman JE. Curr Opin Biomed Eng. 2018 Aug 21.
  • ナノ粒子を利用して薬剤を疾患部位に送達することで、薬効を向上させることが可能である。薬剤のin vivo送達には、培養細胞には存在しない物理的および生理学的障害を克服する必要があるが、これまでのところ、ナノ粒子のin vivoでの性能をin vitroスクリーン結果から推定するに止まっている。一方で、1〜2,000億種類のナノ粒子を作出することが理論的には可能である(下図左 Figure 1参照)。
nanoparticle 1 nanoparticle 2
  • そこで、Georgia Institute of TechnologyとEmory School of Medicineの研究チームは、ハイスループットin vivoスクリーンを可能とする技術について、DNAバーコードを付したナノ粒子(上図右 Figure 2参照)に焦点を当て、論じた。
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