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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典]"Mapping 3D genome organization relative to nuclear compartments using TSA-Seq as a cytological ruler" Chen Y [..] Belmont AS. J Cell Biol. 2018 Aug 28.
  • TSA-Seqの要素技術であるTSA(チラミドシグナル増幅)は、免疫細胞化学で広く利用されている技術であり、チラミドが西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)の触媒作用によりフリーラジカル化し、近傍に存在するチロシン残基などの芳香族アミノ酸と非選択的に共有結合する現象に基づいている。TSAはこれまで、RNA-TRAP(tagging and recovery of associated proteins)およびimmuno-TRAPとしてゲノム解析に利用された例があるが、ゲノムワイドでの解析には至らなかった。
  • University of Illinois at Urbana-Champaignを始めとする米国・オランダの研究チームは、TSAがDNAを直接かつゲノム全域にわたって一様に標識し、TSA反応におけるチミジン・フリーラジカルの定常状態での濃度が単純な指数関数的減衰に従うことを見出し、シーケンス・リード数から、染色体の領域と核サブ構造体との物理的距離を算定する手法TSA-Seqを開発し、“cytological ruler”と位置付けた (原論文Graphical Abstractの一部とFigure 2の一部引用左下図参照)。
TSA-Seq 1 TSA-2
  • ヒト白血病細胞K562にTSA-seqを適用し、核ラミナ、核スペックルあるいはこれまで知られていなかった転写ホットゾーン(原論文Graphical Abstractの一部引用右上図の上段参照)といった核サブ構造体とゲノム領域・遺伝子群との位置関係を明らかにした。
  • 核スペックル近傍のType Iホットゾーンにより多くの遺伝子が位置し、その多くが高発現遺伝子、ハウスキーピング遺伝子、転写一時停止低頻度な遺伝子およびスーパーエンハンサーであった。
  • また、核サブ構造体と細胞内遺伝子転写活性の分布の新たなモデルを提唱した (原論文Figure 10の一部引用右上図の下段参照)
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