1. CRISPR/Cas9システムによるムコ多糖症 I型モデルマウスのin vivoゲノム編集
[出典] "In vivo genome editing of mucopolysaccharidosis I mice using the CRISPR/Cas9 system" Schuh RS [..] Baldo G. J Control Release. 2018 Aug 28.
- ムコ多糖症 (MPS) I は、α-L-イズロニダーゼ (IDUA)の欠損が病因となり細胞内にグリコサミノグリカン(GAG)が蓄積する疾患である。ブラジルの研究チームはMPS Iの遺伝子治療法として今回、顕微溶液化でリポソームとCRISPR/Cas9の複合体を形成し、CRISPR/Cas9プラスミドとドナー・ベクターをカチオン性リポソームで送達し、in vitroおよびin vivoにおける遺伝子編集と、プラスミド単体による遺伝子編集と比較した。
- リポソーム複合体と共にインキュベーションしたMPS I患者由来の線維芽細胞では、IDUA活性が向上し、リソソームの異常が低減した。
- リポソーム複合体を尾静脈から注入した新生仔マウスでは、血清中のIDUAレベルが顕著に上昇した。リポソーム複合体は、肺、心臓に局在する傾向を示し、これらの組織において蓄積GAGが減少し、また、マウスの循環器系に改善が見られた。
2. Cas9タンパク質を介したHDR過程による農業害虫チチュウカイミバエの効率の高いゲノム編集
[出典]"Highly efficient genome editing by homology-directed repair using Cas9 protein in Ceratitis capitata" Aumann RA, Schetelig MF, Häcker I. Insect Biochem Mol Biol. 2018 Aug 26.
- ドイツJustus-Liebig-University Gießenの研究チームは今回、CRISPR-Cas RNPとHDRのドナーとなる短い一本鎖ODNを介したHDRにより、チュウカイミバエにおいて効率的な遺伝子編集を実現し(ミバエ科で初)、CRISPR-Cas技術により、米国では遺伝子組換え生物(GMO)の規制対象外となる不妊虫放飼法に最適な系統作出の可能性を示した。
3. Aspergillus nigerゲノムを、tRNAプロモータ駆動CRISPR/Cas9 gRNAで、効率的に編集
[出典] "Efficient genome editing using tRNA promoter-driven CRISPR/Cas9 gRNA in Aspergillus niger" Song L , Ouedraogo JP, Kolbusz M, Nguyen TTM, Tsang A. PLoS One. 2018 Aug 24.
- Aspergillus属のCRISPR/Cas9ゲノム編集においてgRNAの送達がボトルネックとなっていた。カナダConcordia Universityの研究チームは今回、tRNA遺伝子とその上流の配列100 bpsを含む内因性tRNAプロモーターでgRNA転写を駆動する手法を開発した。原論文Fig 1から引用した下図にあるように、Cas9発現プラスミドと、今回開発のgRNA発現プラスミドをA. nigerに送達することで、テストした37種類のtRNAプロモーターうち36種類がA. nigerに意図した変異の誘発を実現した。
- Cas9と共に染色体外プラスミドとして発現させることで97%の変異誘発効率を達成し、加えて、HR用DNAテンプレートを併用することで遺伝置換効率~42%、NHEJ因子除去により90%を超える置換効率を実現。
In: Vleminckx K. (eds) Xenopus. Methods Mol Biol. 2018;1865から:
4. [プロトコル]CRISPR/Cas9によるXenopus tropicalisの組織特異的多重ゲノム編集
[出典]"Methods for CRISPR/Cas9 Xenopus tropicalis Tissue-Specific Multiplex Genome Engineering" Naert T, Vleminckx K. In: Vleminckx K. (eds) Xenopus. Methods Mol Biol. 2018;1865:33-54
- アフリカツメガエル研究の標準的な実験装置を有しマイクロインジェクションの経験がある研究者がF0変異体を1~2週間で作出可能なプロトコル;4倍体アフリカツメガエルにおいて4遺伝子までの同時編集、すなわち、ホメオログの同時編集、を可能とするプトロコル;オフターゲット作用の抑制法
5. [プロトコル] CRISPR/Cas9ゲノム編集したXenopus tropicalisのジェノタイピング
[出典]"Genotyping of CRISPR/Cas9 Genome Edited Xenopus tropicalis" Naert T, Vleminckx K. In: Vleminckx K. (eds) Xenopus. Methods Mol Biol. 2018;1865:67-82
- F0 CRISPR/Cas9ファウンダーにおけるゲノム編集効率の測定、および、ヘテロ 型、複合ヘテロ 型およびホモ型のF1世代変異体の同定にジェノタイピング技術のプロトコルと評価
6. [プロトコル]BATCH-GE: ゲノム編集実験で得られる大量NGSデータの解析ツール
[出典]"BATCH-GE: Analysis of NGS Data for Genome Editing Assessment" Steyaert W, Boel A, Coucke P, Willaert A. In: Vleminckx K. (eds) Xenopus. Methods Mol Biol. 2018;1865:83-90.
- Indelなどの変異の同定と変異誘発効率の算出
7. [プロトコル]CRISPR/Cas9を介した腫瘍抑制因子ノックアウトによるXenopus tropicalisヒト癌モデル作出
[出典]"Cancer Models in Xenopus tropicalis by CRISPR/Cas9 Mediated Knockout of Tumor Suppressors" Naert T, Vleminckx K. In: Vleminckx K. (eds) Xenopus. Methods Mol Biol. 2018;1865:147-161.
- ベルギーGhent大学の研究チームがX. tropicalis胚におけるCRISPR/Cas9遺伝子編集から腫瘍を帯びたF0世代モザイク変異体のジェノタイピングと フェノタイピングまで、実験プロトコルを解説
8. [プロトコル]Xenopus tropicalisの先天性心疾患遺伝子のCRISPR/Cas9 F0スクリーニング
[出典] "[PROTOCOL]CRISPR/Cas9 F0 Screening of Congenital Heart Disease Genes in Xenopus tropicalis" Deniz E, Mis EK, Lane M, Khokha MK. In: Vleminckx K. (eds) Xenopus. Methods Mol Biol.2018;1865:163-174.
- 先天性心疾患 (Congenital Heart Disease, CHD)は、米国と欧州では新生児1,000人のうちほぼ8人に、世界中で130万人の新生児に見られ、死亡率が高い。全エクソームシーケンシングや高密度SNPアレイを利用したコピー数多型アッセイから、CHD患者に特有のゲノム変異が多数同定されているが、これらの候補遺伝子からの心臓形態形成不全の原因遺伝子の特定は進んでいない。
- Yale大学の研究チームが今回、X. tropicalisをモデルとして、CRISPR/Cas9システムと、マイクロスケールの画像解析を可能にする光干渉断層撮影 (Optical Coherence Tomography, OCT)を組み合わせた、数千の候補遺伝子の機能解析を可能とするプロトコルを解説。
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