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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

出典
背景
  • 近年、鳥類が目に存在するチトクロームによって地球磁場を「見る」(magnetoreception/磁覚)ことを示唆するデータが蓄積されてきた。また、特定の波長の光の存在下で磁場を「見る」ことができ、特に、渡り鳥(garden wabler/Sylvia borin)で青色光受容体タンパク質クリプトクロム (Cryptochrome)1aが青色光によって活性化し生成するラジカルペア*の1 μsから100 μs継続する**スピン運動を介して磁覚を実現することが示唆されていた。
  • *) Chemical Magnetoreception: Bird Cryptochrome 1a Is Excited by Blue Light and Forms Long-Lived Radical-Pairs, PloS One 2007; **) "The quantum needle of the avian magnetic compass" PNAS 2016
  • 2018年に入りLund大学の研究チームがゼブラフィンチを対象として、Carl-von-Ossietzky-Universität Oldenburgをはじめとするドイツ・デンマークの共同研究チームがヨーロッパコマドリを対象として、相次いで、Cry4が磁覚を担う主体でことを示唆する実験結果を報告した。
ゼブラフィンチ論文
  • Lund研究チームは磁覚に関与するチトクロームは概日を超えて光感受性を維持する必要があるという仮説をたて、三種類のチトクローム、Cry1, Cry2 およびCry4遺伝子の脳、筋肉ならびに目における遺伝子発現を測定し、Cry1Cry2は概日リズムで振動するが、Cyr4が概日リズムとは独立に一定レベルの発現が継続することを見出した。
  • ドイツ・デンマークの研究チームも、 Cry1a, Cry1bならびにCry2のmRNAは概日リズムで振動するが、Cry4は概日リズム振動が弱いことを見出した。
  • さらに、ヨーロッパコマドリとニワトリの網膜全域にわたり、Cry4が赤色感受性錐体と緑色感受性錐体細胞が繋がったダブルコーンならびに長波長のシングルコーンの外側に極めて強く発現するが、ニワトリに対してヨーロッパロビンは明らかに渡りの季節にCry4の発現が亢進することを見出した。
  • これまでのところ、Cry4は磁覚を示す生物種にだけ見出されており、また時計遺伝子としての機能も知られていない。また、ヨーロッパロビンのCry4フラビンアデニンジヌクレオチドに結合することが示唆されたことからも、Cry4が磁覚を担う主体と見られる。
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