Weizmann Institute, Tel Aviv Sourasky Medical Centerなどのイスラエルの研究グループが、プロバイオティクスの腸内定着の個人差と、プロバイオティクスの抗生物質処置後投与による腸内菌共生バランス失調(ディスバイオシス/dysbiosis)長期化のリスクを、Cell誌9月8日号掲載2論文で報告

1. 市販のプロバイオティクスの腸粘膜定着は、宿主のマイクロバイオームと相関して、個人間で変動する
[出典] "Personalized Gut Mucosal Colonization Resistance to Empiric Probiotics Is Associated with Unique Host and Microbiome Features" Zmora N, Zilberman-Schapira G, Suez J, Mor U [..] Segal E, Elinav E. Cell. 2018 Sep 6;174(6):1388-1405.e21
  • 生活の質の改善と疾患予防の手段としてプロバイオティクスが普及しているが、腸粘膜への定着率のデータは十分ではなく議論の余地が残っていた。
  • マウスとヒトの便マイクロバイオームと腸内マイクロバイオーム (ヒトでは内視鏡で採取)をメタゲノム解析し、両者の相関は部分的であることを見出した。
  • マウスおよびヒトを対象として、11系統のプロバイオティクスまたはプラセーボの摂取前と摂取中の便および腸粘膜マイクロバイオームをマルチオミックス解析した。
  • プロバイオティクス菌の殆どが摂取時または摂取直後の便マイクロバイオームにエンリッチされていた。
  • 近交系野生型マウスでは無菌マウスとは対照的に、常在菌の存在によりプロバイオティクス菌の腸粘膜定着が限定された。
  • 腸内マイクロバイオームの多様性が相対的に高い健常人15人を被験者とする実験から、ヒトの腸粘膜への定着については、便マイクロバイオームには見られない、個人、地域、および、菌株への依存性が見られた。この現象に基づいて、被験者を"許容型 (permissive)"と"抵抗型 (resistant)"に層別可能であり、また、個人の特徴に基づいたプロバイオティクスの効用の個別化予測も可能である。
  • さらに、プロバイオティクスが腸マイクロバイオームの構成や宿主のトランスクリプトームに与える影響も、腸粘膜定着パターンの個人差に応じて異なった。
  • プロバイオティクスサプルメントの効用に普遍性は無く、個別化プロバイオティクスの開発が待たれる。
2. 抗生物質処置後の腸粘膜マイクロバイオームの回復は、プロバイティクスによって遅延し、自家便移植 (autologous fecal microbiome transplantation, aFMT)で改善する
[出典] "Post-Antibiotic Gut Mucosal Microbiome Reconstitution Is Impaired by Probiotics and Improved by Autologous FMT" Suez J, Zmora N, Zilberman-Schapira G, Mor U [..] Segal E, Elinav E. Cell. 2018 Sep 6;174(6):1406-1423.e16
  • プロバイオティクスは、抗生物質処置に伴うディスバイオシス予防に広く処方されているが、プロバイオティクスが腸粘膜マイクロバイオーム修復に寄与する機構は明確になっていない。
  • 研究グループは、論文1と同様の手法で、広域抗生物質処置前、処置後、および、プロバイオティクス投与、aFMTまたは無処置経過観察による便マイクロバイオームと腸マイクロバイオームの修復を解析した。ヒト被験者は3手法に8人、6人、7人と割り振った。
  • 抗生物質処置後に、腸マイクロバイオームのα多様性が激減することを確認した。
  • 抗生物質処置後摂取するプロバイオティクスのヒト腸粘膜への定着が亢進したが、マウス腸粘膜への定着改善は中程度であった。
  • 便マイクロバイオームと腸粘膜マイクロバイオームの双方とも、プロバイオティクスがもたらす修復は、無処置経過観察における自発的修復よりも長期間を要し、また、不完全であった。一方で、aFMTは迅速 (数日間)かつ完全な修復を実現した。このプロバイオティクスの作用は、in vitro実験からLactobacillusが分泌する可溶性因子に誘導されることが示唆された。
  • 抗生物質処置後のプロバイオティクスの効用が腸マイクロバイオームの修復不全によって相殺されることから、aFMTの開発またはプロバイオティクス処方の個別化が必要である。