crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Nucleosomes inhibit target cleavage by CRISPR-Cas9 in vivo" Yarrington RM, Verma S, Schwartz S, Trautman JK, Carroll D. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2018 Sep 10.

背景
  • CRISPR-Casシステムによって、広範な細胞と生物種のゲノム編集が可能になった。しかし、その編集効率や編集結果は、同一細胞内のゲノム上であってもゲノム上の標的配列によって大きく変動する。この変動は直接には、gRNAと標的配列との相互作用の質に依存するが、CRISPRタンパク質Casの標的へのアクセスのし易さにも依存すると見られている。
概要
  • University of Utah School of Medicineの研究チームは今回、Streptococcus pyogenes Cas9 (SpyCas9)ヌクレアーゼの標的切断がクロマチン、特にヌクレオソームの存否に左右されることを明確にした。
  • これまでにin vitro生化学実験によって、SpyCas9はヌクレオソームに組み込まれたDNAに対する結合・切断が強く阻害されることが示され、細胞内in vivo実験でも、SpyCas9切断効率とクロマチンアクセシビリティーまたは標的配列の転写との相関が示されていた。
  • 研究チームは、Saccharomyces cerevisiaeにおいて、ヌクレオソームとの位置関係と動態が詳細に解析されている2種類のプロモーター、HOPHO5内の複数箇所のDNA配列に対するSpyCas9切断活性を、サザンブロッティング法により直接リアルタイムで測定した。
  • ヌクレオソーム内に位置していないHOは、SpyCas9によって効率的に切断された。不活性遺伝子の上流のヌクレオソーム内に位置するPHO5のSpyCas9による切断は強く抑制されたが、PHO系遺伝子の負調節因子であるPho85キナーゼー活性を阻害することで、SpyCas9切断効率が向上した。
  • SpyCas9と対照的に、同じ標的DNAに対するZFNsの切断活性は、標的DNAとヌクレオソームとの位置関係には殆ど影響されなかった。研究チームは、このSpyCas9とZFNsの違いが、SpyCas9がその3次元構造内の深いクレフトでPAMを認識し標的に結合するのに対して、ZFNsは'指先'を ヌクレオソームの表面に露出している6塩基長のDNA二重螺旋の主溝に差し込むことで標的認識・結合可能なことから、生じることを示唆した。
ヌクレオソームとCRISPR-Cas編集効率に関するcrisp_bio記事と原論文
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット