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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] Protein Barcodes Enable High-Dimensional Single-Cell CRISPR Screens. Wroblewska A, Dhainaut M, Ben-Zvi B [..] Merad M, Rahman AH, Brown BD. Cell. 2018 Oct 18.; Graphical abstract https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S0092867418312340-fx1_lrg.jpg

要約
  • Icahn School of Medicine at Mount Sinaiの研究チームは今回、線状エピトープ(linear epitope)を組合せることでDNAバーコーディングの限界を超えるタンパク質レベルでのバーコーディング・システムを開発し、Pro-Codesと命名した。
  • Pro-CodeとCRISPR gRNAを1対1で組み合わせ、CRISPR編集結果をCyTOFマスサイトメトリー (Mass Cytometry) で分析することで、多数の遺伝子の編集結果と、多次元の表現型との相関の同定が可能なことを実証した。
Pro-Codesの実証
  • 14種類の合成線状エピトープ (18-42-nt)を組み合わせることで364種類のPro-Codesを生成し、それぞれレポータタンパク質dNGFRと融合し、レンチウイルスベクターにより低MOIにて293T細胞へ導入、14種類の線状エピトープに対して異なる金属を帯びた抗体14種類で染色し、CyTOFで分析することで、364種類のPro-Codesセットを発現する細胞集団それぞれを識別可能なことを確認した。
  • ヒト乳癌由来4T1細胞株をマウスに移植し、10エピトープからなる120Pro-Codesを利用することで、4T1細胞のマウスin vivoでの細胞系譜を追跡した。
Pro-Codes CRISPRスクリーンの実証(1)
  • 54遺伝子を標的とするgRNAs (1-3 gRNA/gene)とPro-Codesの96組に基づくCRISPRスクリーンを適用したTHP1ヒト単球500,000細胞をCyTOFで分析し、96種類のPro-Codes細胞集団それぞれについて、細胞表面タンパク質を同定した。
Pro-Codes CRISPRスクリーンの実証(2)
  • 免疫調節遺伝子として知られている14遺伝子を標的とするgRNA (3-4 gRNAs/gene)とPro-Code56組を利用したCRISPRスクリーンにより、乳癌の抗原特異的細胞障害性T細胞に対する感受性と耐性と相関する遺伝子を同定した:インターフェロンγに誘導される2種類の遺伝子 (interferon-stimulated genes)の機能を同定した。すなわち、免疫機構に特化したプロテアソーム (immunoproteasome/免疫プロテアソーム)のコンポーネントであるPsmb8、ならびに、免疫機構との相関が知られていなかったシャペロンRtp4が、抗原依存性の癌免疫編集(immunoediting)において重要な役割を担っていることが明らかになった。また、同じスクリーン実験内で、Socs1が免疫チェックポイントのPD-L1を負に制御することも同定した。
まとめ
  • Pro-Codesの特長は、プール型スクリーンによって、多数のタンパク質について、一細胞分解能での高次元フェノタイピングが可能なところにある。
  • Pro-codesを新たに1,000種類作出することは技術的に可能であるが、ゲノムワイドPro-Codesの作出はDNAバーコードライブラリーの構築ほど簡便ではない。Pro-Codesは、特定のパスウエイや遺伝子クラスに焦点を絞った100-500遺伝子を標的とするCRISPRスクリーンに向いている。
参考図 (Cell at Cell Pressツイートから引用)

背景
  • CRISPR-ko/i/a技術によって任意の遺伝子のノックアウト(KO)、ノックダウン (KD)または過剰発現 (OE)が可能になった。また、gRNAを遺伝子バーコーディングとして利用するプール型CRISPRスクリーン技術により、多数の遺伝子の機能を同時に同定することも可能になった。プール型CRISPRスクリーンでは専ら、遺伝子編集の影響を細胞集団に存在するgRNAの頻度でCRISPR編集結果を評価してきたが、この手法では一細胞分解能での機能情報が得られず、また、タンパク質発現の上方/下方制御といった細胞増殖/細胞死を超えたより高次元の表現型との相関を同定することが難しかった。近年、ベクターにコードしたRNAをバーコードとする手法や、CRISPRスクリーンと単一細胞RNA-seq (scRNA-seq)を組合せる手法が開発されたが、遺伝子型とシグナル伝達パスウエイといった高次元の表現型との相関解析には複雑なデータ解析を必要とする。

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