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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1. タイプI-E CRISPRシステムにおいて、Cascade複合体が外来DNAからのスペーサ獲得と外来DNAの切断の双方に関わる分子機序
[出典] "Assembly and Translocation of a CRISPR-Cas Primed Acquisition Complex" Dillard KE, Brown MW [..] Finkelsteind IJ. Cell. 2018 Oct 18. (bioRxiv. 2017 Oct 26)
  • CRISPR-Casシステムの獲得免疫機構はウイルスなどの外来ゲノムから免疫記憶となるスペーサとなる断片を獲得(acquisition)することから始まるが、タイプ I CRISPR-Casシステムには、naive acquisitionとprimed acquisitionの2種類の過程が存在している。
  • Naive acquisitionは、Cas1-Cas2インテグラーゼが、新旧を問わず外来ゲノムから断片を獲得する機構であり、Primed acquisitionは、Cas1-Cas2に巨大なCascade複合体 とCas3ヘリカーゼ/ヌクレアーゼが加わることで、再感染したウイルスのゲノムから迅速に新たなスペーサとなる断片を獲得する機構である。Primed acquisitionによって、かって感染したウイルスの変異体への迅速対応が可能になっている。
  • University of Texas at AustinとCornell Universityの研究チームは今回、一分子蛍光イメージングによりThermobifida fusca (Tfu)のタイプ IーE CRISPR-Casシステムにおいて、Cascadeがprimed acquisitionと外来ウイルスゲノム切断の双方に関わる分子機序を詳らかにした。
  • CascadeのサブユニットであるCse1によってCascadeが外来DNA上を高速で拡散しつつ標的を探索・認識、標的に結合したCascadeがCas3をリクルート、外来DNAを切断するCascade/Cas複合体が形成される。この複合体は、crRNAと標的DNAが一時的に形成するRループを介して、他のDNA結合タンパク質(roadbrock)に行き当たるまで移動し、停止したところでCas3によりDSBが誘導される。ここで生成されたssDNAは、RecBCDなどで切断される。
  • Cas1-Cas2はそれ自身DNAに一時的に結合するが、一方で、Cascade/Cas3複合体と相互作用して、primed acquisition complex (PAC)を形成する。PACはroadblockを排除しつつDNA上を長距離移動して下流に位置するPAMを認識し、標的部位から遠位に位置する断片獲得を可能にする。
  • 参考:模式図 (Gaetan Burgioツイート引用)
2. CRISPR遺伝子ドライブに対して関連性が低い多くの遺伝子座が協働して、遺伝子ドライブの効率と無力化を支配する
[出典] "Multiple loci of small effect confer wide variability in efficiency and resistance rate of CRISPR gene drive" Champer J, Wen Z [..] Clark AG. bioRxiv. 2018 Oct 19.
  • CRISPRホーミング遺伝子は、野生型アレルを切断して遺伝子ドライブアレルへと相同組み換えすることで、遺伝子ドライブを実現するが、NHEJによる修復が発生すると遺伝子ドライブに対する耐性アレルが非可逆的に生成される。この機構に対する遺伝的背景(もともと内在している遺伝子変異)の影響を、ショウジョウバエをモデルとして、Drosophila Genetic Reference Panel (DGRP) を利用して分析した。
  • 受精後の初期胚において、遺伝的背景に依存して、耐性アレルの発生確率が7%から79%まで大きく変動することを見出した。さらに、GWAS解析の結果、耐性が、GWASでのオッズ比が低い遺伝子多型を含む多遺伝子性の現象であることが明らかになった。遺伝子ドライブの実用化にあたり、この多遺伝子性に留意すべきである。
3. IKBKBの機能獲得変異ヒト複合免疫不全症のモデルマウス作出
[出典] "Gain-of-function IKBKB mutation causes human combined immune deficiency" Cardinez C, Miraghazadeh B, Tanita K [..] Kanegane H,  Cook MC. J Exp Med. 2018 Oct 18.
  • 重篤な早発性免疫不全症の病因とされる遺伝子変異は多数同定されているが、非家族性を含む晩発性免疫不全症については病因変異の同定が遅れている。オーストラリアと日本の共同研究グループは、複合免疫不全症の患者コホートの全エクソームシーケンシングから新奇な IKBKBヘテロ接合型ミスセンス変異 (c.607G>A)を同定した。
  • 続いて、CRISPR/Cas9を利用して、相同なIkbkb遺伝子にオーソロガスな変異を導入したマウスを作出し、患者の表現型を精密に再現することを確認した。
4. [レビュー] 幹細胞およびゲノム編集とその中枢神経系疾患トランスレーショナル医療への道
[出典] Review "Stem Cells, Genome Editing, and the Path to Translational Medicine" Soldner F, Jaenisch R. Cell. 2018 Oct 18
  • 中枢神経系の疾患に焦点を絞り、ヒト多能性幹細胞 (ES細胞とiPS細胞)に基づくて複雑なヒト疾患モデル (出典のFig. 1にモデルの俯瞰図あり)の最近の進展および限界とその解決策をレビューする。
  • 特に、疾患関連リスク・アレルの機能の体系的解析を可能とするヒト多能性幹細胞技術とCRISPR/Cas9ゲノム編集およびゲノムスケールのゲノム情報とエビゲノム情報の融合による手法をハイライトする。この手法によって、培養細胞での孤発性疾患の研究が可能になる。
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