1. [特許] CRISPR/Casシステムによるゲノム編集の治療応用
  • 公開日:10/11/2018. 発明者:Musunuru K, Cowan CA, Rossi DJ. 権利者:Harvard College, The Children's Medical Center Corporation
  • 多重gRNAsを利用した高効率(~80%)で部位特異的な細胞ゲノム編集法とHIV療法などへの応用
2. 胎児型グロビン再活性化によるβサラセミア遺伝子治療法となりえるヒト造血幹細胞・前駆細胞のゲノム編集に最適なCRISPR/Cas9の送達法
[出典] "Optimization of CRISPR/Cas9 Delivery to Human Hematopoietic Stem/Progenitor Cells for Therapeutic Genomic Rearrangements" 'Lattanzi A, Meneghini V, Pavani G, Amendola M, Mavilio F, Miccio A' Mol Ther. 2018 Oct 16.
3. CRISPR/Cas9の脂質ナノ粒子 (lipid nanoparticle, LNP)送達による遺伝性 ATTR アミロイドーシス (ATTR)療法の前臨床試験
[出典] "Delivering on the therapeutic potential of CRISPR/Cas9: Development of an LNPmediated genome editing therapeutic for the treatment of ATTR" Chang Y. 26th Annual Congress of the European Society of Gene and Cell Therapy 2019 Oct 18.

 ATTRはTTR (transports thyroxine and retinol-binding protein)遺伝子変異を原因とする常染色体優性の稀な遺伝性疾患であり、有効な治療法が存在しない。ATTRでは、肝臓においてTTR四量体が単量体へと分解され、TTRがミスフォールドし、アミロイド線維を形成・凝集し、神経系、心臓、腎臓および眼に異常が生じる。ATTRに相関する遺伝子が100以上知られているが、V30MとV122Iが最も多い。
Inellia Therapeuticsは、European Society of Gene and Cell Therapy年会で、CRISPR/Cas9の脂質ナノ粒子送達によるATTR遺伝子治療のマウス前臨床試験の結果を報告した。
 脂質ナノ粒子は、カプセル化とエンドソームエスケープ用分解性イオン化脂質 、安定化用コレステロール、構造構築用中性脂質、および、送達中の凝集防止と動態調節用PEGなどで構成され、sgRNA、SpCas9のmRNAを細胞へ送達する。脂質ナノ粒子から放出されたCas9 mRNAの発現、Cas9タンパク質とsgRNAのRNP複合体形成を経て、核内での遺伝子編集へと進む:
  • 肝臓を標的とするCRISPR/Cas9-LNPの単回投与により、肝細胞で~50-70%の編集効率、その他の組織の細胞において~30-50%の編集効率を達成した。
  • 循環血清中のTTRタンパク質は96%以上減少し、このTTRノックダウンは12ヶ月以上継続し、一方で、形質転換や癌化は見られなかった。
  • ヒトTTR V30M変異タンパク質を発現させたマウスモデルにおいても、単回投与により、血清中のTTRタンパク質が減少し、肝臓などの組織におけるアミロイド沈着が抑制された。
  • ヒト肝細胞in vitroにおいてもTTRのmRNAとタンパク質レベルが低下した。
  • SpCas9 mRNA、sgRNAおよびイオン化脂質は17-20時間で消失した。
4. マウス網膜におけるCampylobacter jejuni Cas9の長期間発現は網膜を障害しない
[出典] "Long-term effects of in vivo genome editing in the mouse retina using Campylobacter jejuni Cas9 expressed via adeno-associated virus." Jo DH, Koo T, Cho CS, Kim JH, Kim JS, Kim JH. Mol Ther. 2018 Oct 7.
  • 韓国の研究チームは先行研究でHif1aを標的とするCjCas9をAAVベクターで硝子体内注射し、マウス網膜の病的脈絡膜新生血管を効果的に抑制した。14ヶ月後に、網膜細胞と網膜色素上皮細胞における標的遺伝子は45%~79%変異していたが、オフターゲットサイトにindelsは生じていないことをDigenome-seqCas-OFFinderで確認した。また、組織学的にも網膜電図にも異常が見られなかった。