1. CRISPR-Casによりヒト癌モデルにもなり得るTP53変異ブタを作出
[出典] "Generation of a TP53-modified porcine cancer model by CRISPR/Cas9-mediated gene modification in porcine zygotes via electroporation" Tanihara F, Hirata M, Nguyen NT, Le QA, Hirano T, Takemoto T, Nakai M, Fuchimoto DI, Otoi T. PLoS One. 2018 Oct 23;13(10):e0206360
  • 徳島大学と農研機構の研究チームがGEEP*法を利用して、TP53のモザイク変異または両アレル変異を帯びたブタを作出し、ヒト癌モデル足り得ることも実証。(*) CRISPR関連文献メモ_2016/09/18 1. GEEP:体細胞核移植に替わるモデルブタの作出法を確立
  • 具体的には、TP53のエクソン3そしてまたはエクソン4を標的とするsgRANとCas9からなるRNP複合体を体外受精卵にエレクトロポレーションすることで、TP53変異ブタを作出  (原論文Fig.1引用下図参照)TP53 pig
  • 編集した受精卵を移植したブタから出産されたのべ11匹の子豚のうち9匹が生存;2匹が野生型のゲノム配列を帯びておらず、4匹がモザイク変異;16ヶ月間観察し、6匹のうち3匹に癌の表現型を発見し、変異型との相関を同定
2.CRISPR-CasによるSaccharomyces cerevisiae染色体の多重融合
[出典] "CRISPR-Cas9 facilitated multiple-chromosome fusion in Saccharomyces cerevisiae" Shao Y, Lu N, Qin Z, Xue X. ACS Synth Biol. 2018 Oct 23. 
  • 2018年8月にNature誌で、S. cerevisiaeの染色体を1本の染色体へと再構成*した研究成果を発表した中国科学院のShaoらは今回、2染色体セットと3染色体セットをそれぞれ75%と50%の効率で実現した。
  • *) CRISPRメモ_2018/08/03 1.CRISPR-Cas9による「切り貼り」でS. cerevisiaeの染色体16本を1本または2本へと再構成
  • 酵母の染色体工学関連論文:CRISPRメモ_2018/09/15 - 1. CRISPR/Cas9による酵母ゲノムリシャフリング
3. CRISPR/Cas9によるオルタナティブプロモーター編集による細胞型特異的遺伝子ノックダウン - NEMOタンパク質の場合
[出典] "CRISPR/Cas9-based Editing of a Sensitive Transcriptional Regulatory Element to Achieve Cell Type-Specific Knockdown of the NEMO Scaffold Protein" Babaei M, Liu Y [..] Gilmore TD. bioRxiv. 2018 October 23.
  • NEMOは、古典的NF-κBシグナル伝達に必要な足場タンパク質であり、NEMO遺伝子の転写は2種類のプロモーターで調節されている。ほとんどの細胞型でNEMO転写をドライブするプロモーターBと、肝臓細胞でのNEMO転写を主として担いプロモーターAである。
  • Boston U.とU. Wisconsinの研究チームは今回、プロモーターBのコア配列をCRISPR/Cas9で削除すると、ヒト胎児由来腎臓上皮細胞株293TにおけるNEMO mRNAとタンパク質の発現が消失することを見出した。
  • NEMOタンパク質を発現しない細胞では、TNF処理に対する古典的NF-κB経路の応答が見られない一方で、非古典的 NF-κB経路は維持されていた。また、NEMOの異所発現によりTNFに応答する古典的NF-κB経路の下流のシグナル伝達が回復した。
  • ヒト肝臓癌由来SNU-423では、プロモーターAによるNEMO発現が、プロモーターBのコア配列破壊による影響を打ち消す。