1. [プロトコル] scGESTALT: トランスクリプトームとCRISPR-Cas9バーコードの単一細胞における読み出しにもとづく大規模な細胞系譜の再構成
[出典] "Large-scale reconstruction of cell lineages using single-cell readout of transcriptomes and CRISPR–Cas9 barcodes by scGESTALT" Raj B, Gagnon JA, Schier AF. Nat Protoc. 2018 Oct 23.
  • ゼブラフィッシュで実証されたscGESTALT法*の詳細プロトコル:(i) トランスジェニック・ゼブラフィッシュの作出;(ii) Cas9による多時点バーコード・アレイの編集;(iii) 脳組織のscRNA-seqライブラリー構築;(iv) 同時に一細胞ごとのバーコードを増幅; (v) シーケンシングとクラスタリング; (vi)細胞型ごとの系譜図
  •  (プロトコル Fig. 1参照);所要期間は(i)に6ヶ月を要し、その後は1ー2週間で
  • CRISPR-Cas9を利用する同様な手法LINNAEUSとScarTraceおよび他の細胞系譜追跡手法との比較、および、scGESTALTの課題も提示
  • LINNAEUS, ScarTraceならびにGESTALTのcrisp_bio記事:細胞バーコーディングとscRNA-seqを一体化して、細胞型の同定と細胞系譜再構築の一石二鳥を実現(3件)
2. [プロトコル] 慢性リンパ性白血病テキストブック掲載CRISPR-Cas9技術プロトコル
[出典] Malek S. (eds) Chronic Lymphocytic Leukemia. Methods in Molecular Biology. 2018 Oct 23.
3. 転写因子CTCFの発現が、体細胞の生存と癌の発生抑制に必須である
[出典] "CTCF Expression Is Essential for Somatic Cell Viability and Protection against Cancer" Bailey CG [..] Rasko JEJ. Reprints. Posted 2018 0ct 19. (not peer-reviewed)
  • ヒト慢性骨髄性白血病由来K562、マウス胚由来線維芽細胞 (MEF)、マウス個体およびヒト子宮内膜癌培養細胞において、CTCF遺伝子を標的とするCISPR/Cas9遺伝子編集とshRNAノックダウンにより、CTCFはプロ不全が、体細胞/癌細胞に与える影響を分析
4. [レビュー] CRISPR-Cas技術の発展と医療への応用
[出典] Review "Blossom of CRISPR technologies and applications in disease treatment"  Liu H, Wang L, Luo Y (Sichuan University and Collaborative Innovation Center of Biotherapy). Synth Syst Biotechnol. 2018 Oct 22.
  • CRISPR ko/a/i、クロマチン可視化、1塩基編集 (BE)、エピゲノム編集、核酸検出などのツール;Casタンパク質の多様化;CRISPR治療 (in vivo 遺伝子治療、細胞療法、耐性菌対応、免疫療法)
5. [レビュー] CRISPR/Cas9ゲノム編集におけるモザイク発生の原因と対策
[出典] Review "Mosaicism in CRISPR/Cas9-mediated Genome editing" Mehravar M, Shirazi A, Nazari M, Banan M. Dev Biol. 2018 Oct 22.
  • CRISPR/Cas9遺伝子編集に付随するモザイク発生は、特に、胚の編集由来のファウンダーマウスで問題になる。モザイク発生の分子機構と体外受精卵へのCRISPR RNP送達の採用などの対策をレビュー
6. [レビュー] 安全なCRISPR: 課題と解決策
[出典] Review "Safe CRISPR: Challenges and Possible Solutions" Pineda M, Lear A, Collins JP, Kiani S. Trends Biotechnol. 2018 Oct 20.
  • ゲノム編集の分子機序の解明が進み、高精度な時空間制御が可能になりつつあり、CRISPR技術による治療と遺伝子ドライブも実用化に向かいつつある;CRISPR技術によるex vivoとin vivoの治療法の治験が米国と中国で始まったが、倫理的、法的および社会的考察が必要;CRISPR技術による遺伝子ドライブの野外実験には、生態および進化のダイナミクスの研究が必要
7. 卵菌類Aphanomyces invadansのCRISPR/Cas9ゲノム編集
[出典] "Editing the genome of Aphanomyces invadans using CRISPR/Cas9" Majeed M, Soliman H, Kumar G, El-Matbouli M, Saleh M. Parasit Vectors. 2018 Oct 23;11(1):554.
  • A . invadansは魚類の流行性潰瘍性症候群 (EUS)の病原真菌である。今回、EUSの毒性をもたらすと想定されていたA . invadansの細胞外セリン・プロテアーゼを標的とするCas9-sgRNAのRNPを、A. Invadansとその遊走子に送達し、セリンプロテアーゼの生産ひいてはEUSの発生を阻害することを同定
8. Pseudomonas aeruginosaとそのウイルスにおけるCRISPR-Cas免疫のMetapopulation (メタ個体群)構造
[出典] "Metapopulation Structure of CRISPR-Cas Immunity in Pseudomonas aeruginosa and Its Viruses" England WE, Kim T, Whitaker RJ. mSystem. 2018 Oct 23.
  • 日和見感染菌P. aeruginosaに感染するウイルスが、嚢胞性線維症 (CF)患者の生理と予後に影響を与えることが明らかになってきた。 University of Illinois at Urbana-Champaignの研究チームは今回、コペンハーゲンのCFクリニックのCF患者の時系列データからP. aeruginosaのCRISPRアレイを再構築し、スペーサが同一患者内では変動しないが、患者間で多様なことを見出した。この限られたデータセット由来のローカルなスペーサの多様性は、NCBIのSRAからアッセンブルした726種類のP. aeruginosaゲノム由来CRISPRアレイに見られるグローバルなスペーサの多様性を包含していた。
  • 次に、グローバルな~3,000のスペーサを、P. aeruginosaに感染する溶菌性および溶原性の98種類のウイルスゲノムと比較し、溶原性ウイルスゲノムにより高頻度でスペーサ標的を見出した。
9. CRISPR技術による生殖細胞系列の編集は、子供達にとっての開かれた未来への扉を閉じてしまうのか?
  • [出典] "Will CRISPR Germline Engineering Close the Door to an Open Future?" Mintz RL, Loike JD, Fischbach RL. Sci Eng Ethics 2018 Oct 24.
  • 生殖細胞系列ゲノム改変の倫理的課題は、胚が自律的判断を表明できない点にある。哲学者Joel Feinbergはかって、自律性は出生後に発達するとし、子育ての間の親の倫理的判断は、子供達が将来自律的判断を下せるように導かれるべきとした。著者らは、生殖細胞系列の編集の多くは、この"Feinberg’s 1980 open future theory"*に反するという観点から論考:(*) "The foundation of the child’s right to an open future" Millum J. J Soc Philos. 2014 Winter;45(4):522-538
10. [コメント] 特許システムを介した遺伝子編集技術の規制を推奨
[出典] "Use the patent system to regulate gene editing" Parthasarathy SNature. 2018 Oct 23.
  • ワシントンDCで開催された第一回から三年を経て第二回International Summit on Human Gene Editingが上海で開催されるが、その間、各国政府とも遺伝子工学に対する既存の規制を援用するにとどまり、また、米国科学アカデミーや英国のNuffield Council on Bioethicsの勧告を活かすこともできず、適切な規制案を見出せないままであった。
  • 一方で、その公開件数が2015年に 700件を超え、さらに2016年には1,000件を超えるに至ったCRISPR-Cas9関連特許が、一種の自律的規制を生み出しつつある。政府も特許システムを介して、技術開発の方向づけを行なってきた歴史がある。古くは、米国における特許システムを介して私企業による原子爆弾開発を規制した例があり、近年では欧州連合理事会が、ヒトの福祉と動物愛護のバランスがとれた動物改変に関する特許に限り承認すべきとした。
  • CRISPR技術については政府の規制を待たず、例えば、Broad Inst.はライセンス契約にて、ヒト胚改変、および、エコシステムまたはタバコの改変を禁じている。また、CRISPRによる遺伝子ドライブを開発したMITのKevin Esveltはライセンス契約にて、利用の目的と内容を公開するように求めている。
  • 著者は、特許システムを利用したより公的で網羅的な規制システムを政府が主導して構築すべきと提案。