[出典] "Intrinsic Nucleotide Preference of Diversifying Base Editors Guides Antibody Ex Vivo Affinity Maturation" Liu LD, Huang M, Dai P [..]  Zhao Y, Yeap, LS, Meng  FL. Cell Rep. 2018 Oct 23.

背景
  • 塩基編集 (BE)法は、BE3、YEE-BE3、SaBE4-GamおよびTarget-AIDといった精密な塩基編集を目的とするBE (precision BE, PBE)と、CRISPR-XやTAM (Targeted AID-mediated Mutagenesis)*といった局所的に配列を多様化するBE (diversifying BE, DBE)に分類される**。DBEを介して体細胞超変異 (somatic hypermutations, SHM)を誘導することで、高親和性抗体を作出することが可能である。
  • (*) CRISPR関連文献メモ_2016/12/04 2- [NEWS & VIEWS] TAM法とCRISPR-X法:CRISPR-Cas9-AIDによるゲノムの多様化とその応用
  • (**) CRISPRメモ_2017/10/09_Molecular Cell & Cell Stem Cell 特集 (11編)  - 3 . [レビュー]CRISPR技術を介した真核生物ゲノムのBase Editing (BE)の手法と応用
成果
  • 中国科学院、中国農業大学ならびに上海交通大學醫學院の研究チームは今回、体細胞ゲノムの~400-bpの領域に多様な変異を誘導可能なDBEを作出した。
  • はじめに、先行研究のBE1, BE2, BE3, Target-AIDおよびCRISPR-Xが、HEK293T細胞に形質導入した~100-bpのGFP配列に誘導する変異プロファイルを比較し、この中で、のべ4つのデアミナーゼをMS2を介してsgRNAの2箇所のヘアピン構造に結合させるCRISPR-Xが特異的に、広範に多様な変異を誘導することを確認した。
  • 次に、Quaiらが開発したAID変異体 (Mol Cell, 2017)の一種である単量体AID (本論文でAIDmonoと表記)に注目し、種々のdCas9とAIDmonoの組み合わせを評価し、~100-bpの領域にわたって変異を誘発したCRISPR-XとAIDmonoの組み合わせ (dCas9-sgRNA2XMS2-MS2AIDmono)を候補とした。このDBE-AIDmonoは、変異誘発標的としてモチーフWRC (W:A/T, R:A/G)を好む選択性を伴った。
  • さらに、DBEに組み合わせるデアミナーゼとしてAIDmonoの他に、APOBEC3A (A3A) 、 APOBEC3B変異体(A3BAct) およびrAPOBEC1を評価し、最も変異頻度が高かったDBE-A3Aを候補に加えた。
  • BEとTarget-AIDシステムでは塩基編集の効率を高めたCas9ニッカーゼ (nCas9)を組み入れたnDBEは、sgRNAプロトスペーサ内で、3-10 bpの欠損を誘発した。
  • HEK293T細胞におけるマウス抗NP抗体遺伝子の体細胞超変異 (SHM)誘導と結合親和性向上:DBEを、マウスB細胞CH12F3、HeLa、MCF7など種々の細胞株でテストし、DBEによって多様な配列が生成されたHEK293T細胞 (DNAの修復酵素UNGとMSH2あり)においてSHMを検証した。続いて、DBE-AIDmonoとDBE-A3Aにプール型sgRNAライブラリを組み合わせたSHMの誘導と選択を3ラウンド繰り返し、抗体への結合親和性を2~10倍へ向上させることに成功した。