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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

1. TRIAMF: Cas9 RNPのヒト造血幹細胞への新たな送達法
[出典] "TRIAMF: A New Method for Delivery of Cas9 Ribonucleoprotein Complex to Human Hematopoietic Stem Cells" Yen J [..] Yang Y. Sci Rep. 2018-11-02.
  • TRIAMFTRansmembrane Internalization Assisted by Membrane Filtrationに由来する。
  • 患者由来の造血幹細胞・前駆細胞 (HSPCs)をex vivoで編集したのち自家移植する手法は、βヘモグロビン異常症のような単一遺伝子血液疾患の治療法として有望であるが、Cas9-gRNAのRNPのHSPCsへの送達が課題である。βヘモグロビン異常症が開発途上国に多いことから、特に、信頼性と効率が高く、使いやすくかつ廉価な送達法が求められる。Novartis Institutes for BioMedical Researchの研究チームは今回この課題に対して、RNP/HSPC混合液を濾過膜 (原論文 Fig. 1引用下図のa.の(3)の部品)を介して細胞へ押し込むTRIAMFにより応えた。TRIAMF
2. CriPs:両親媒性ペプチドによるCas9/sgRNA RNP送達
[出典] Editors' Picks "A peptide delivery system sneaks CRISPR into cells" Guan X, Luo Z, Sun W. J Biol Chem. 2018-11-02.;論文 "CRISPR-delivery particles targeting nuclear receptor–interacting protein 1 (Nrip1) in adipose cells to enhance energy expenditure" Shen Y [..] Czech MP. J Biol Chem 2018-11-02.
  • エンドサイトーシスにより分子を細胞へ送達する両親媒性Endo-Porter (EP)ペプチドがプロトンスポンジ効果を介してCas9/sgRNA RNPを370 nm径のナノ粒子へと包み込み (CRISPR delivery particles, CriPs)、細胞内へ送達 (Editors' Picks Figure 1参照);マクロファージ、脂肪前駆細胞、腹腔浸出細胞 (PEC)、モデルマウスでの効率的編集をGFPで確認;Nrip1を標的とするCas9/sgRNA RNPをCriPsで初代白色脂肪前駆細胞に送達し、褐色細胞化を実現
3.  Cas9とgRNAの双方を発現させるH1プロモーターにより、レンチウイルスで送達するカセット小型化を実現
[出典] "A single H1 promoter can drive both guide RNA and endonuclease expression in the CRISPR-Cas9 system" Gao Z, Herrera-Carrillo E, Berkhout B. Mol Ther Nucleic Acids. 2018-11-01
  • U. Amsterdamの研究チームは先行研究で、ヒト Pol IIIプロモーター(7SK; U6; H1)が Pol IIの活性を帯びていることを見出していた (Mol Ther Nucleic Acids,  2018)。研究チームは今回、その中で Pol IIの活性が最も高いH1プロモータにより、単一のプロモーターでgRNAとCas9の双方を発現させ、2プロモーターによるCRISPR/Cas9システムよりも小型のカセットで同等の遺伝子ノックアウト活性を実現した。
4. 顕微操作に拠らずに、AAVベクターを利用することで、CRISPR/Cas9ゲノム編集により胚内での遺伝子カセットノックインを実現
[出典] "Intra-embryo gene cassette knock-in by CRISPR/Cas9-mediated genome editing with adeno-associated viral vector" Mizuno N [..] Yamaguchi T, Nakauchi H. iScience. 2018-11-02.
  • 東大とスタンフォーと大学の研究チームは今回、マウスまたはラットの胚に、CRISPR/Cas9 RNPをエレクトロポレーションし、AAV6を利用することで、ノックインするドナーDNAを透明帯を破壊することなく透過させて胚に送達し、大きなDNA断片のノックインと、エクソン置換を実現
5. [スポットライト] 最先端技術の進化:CRISPR技術による指向性進化 (Directed Evolution)
[出典] SPOTLIGHT "Evolution at the Cutting Edge: CRISPR-Mediated Directed Evolution" Abbott TR, Qi LS. Mol Cell. 2018-11-01.
  • UC Berkeleyの研究チームが開発しE. coli で実証した任意の遺伝子座への変異誘導を可能とする超高速進化実験ツールEvolvRを解説し、広範な応用例を提示:CRISPRメモ_2018/09/30 - 5. [ハイライト] 進化し続けるCRISPRバーコーディング・ツールボックス ;CRISPRメモ_2018/08/02 - 1. EvolvR: CRISPRゲノム編集ツール、超高速進化実験ツールへと進化 
6. [特許] Staphylococcus aureus Cas9 (SaCas9)とそのsgRNAを主たる対象とする配列操作に最適なCRISPR-Cas9システムの作出と利用
公開日 1/01/2018;発明者 Zhang F, Yan W, Nureki O, Zheng K,  Cong L,  Nishimasu H, Ran F, Li Y.;権利者 Broad Inst, MIT, Harvard, U Tokyo.

7. [特許] 抗ウイルス剤剤としての化学的にcrRNAとtracrRNAを結合した1gRNAとCas9複合体の作出と利用
  • 公開日 10/25/2018;発明者 Zhong M.;権利者: Zhong M. 
8. CRISPRStudio: 微生物のタイピングとトラッキングに有用な大規模CRISPRアレイの可視化
[出典] "CRISPRStudio: A User-Friendly Software for Rapid CRISPR Array Visualization" Dion MB, Labrie SJ, Shah SA, Moineau S. Viruses. 2018-11-01
  • CRISPRアレイを図形化して比較する作業をコンピュータ化し、大規模なCRISPRアレイの可視化とその微生物タイピングとトラッキングへの利用を実現 (下図左と右は、を原論文Figure 1とFigure3から引用したCRISPRStudioのワークフローとサルモネラ菌のタイピング応用例)
CRISPRstudio 1 CRISPRStudio 3

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