crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1. DISCOVER-seq: CRISPRオフターゲット編集をin vivoで偏りなく検出する法
[出典] "Unbiased detection of CRISPR off-targets in vivo using DISCOVER-Seq" Wienert B, Wyman SK [..] Corn JE. (bioRxiv. 2018-11-14) > Science 2019-04-19. https://doi.org/10.1126/science.aav9023
  • CIRPSR-Casゲノム編集の臨床応用にはオフターゲット活性を見極めることが必須であり、これまでに、in silicoin vitroおよび細胞アッセイの手法が開発されてきたが、いずれにも課題が残っている。配列相同性に基づいたin silico予測は偽陽性率が極めて高い。in vitroでDSBsを誘導するDigenome-seqやCIRCLE-seqならびにSITE-seqは高感度であるが、細胞モデルまたはin vivoで改変されるサイト数に対して極端に少ないか極端に多い結果をもたらす。細胞内のヌクレアーゼ濃度、送達法 (RNP vs. プラスミド)、クロマチンアクセサビリティーといった複雑な細胞状態が、ゲノム編集結果に大きな影響を与えるが、in vitroアッセイではこれらが欠けているからである。一方で、GUIDE-seqといったこれまでの細胞アッセイには、ヌクレアーゼの細胞内活性を再現できるが外来DNAオリゴを標的として利用する弱点を伴う。さらに、in vitroで同定したオフターゲット候補サイトをin vivoで検証する融合法(VIVO) も工夫されたが、膨大な偽陽性サイトについてアンプリコンシーケンシングを繰り返す必要がある。
  • そこで、大規模な前処理や試薬を追加することなくヒト細胞とモデル動物においてin situでゲノム編集サイトを偏りなく解析する手法が未だ求められている。UC Berkeley, UCSF, Gladstone Inst,  ETH Zurich, AstraZenecaの研究チームは今回、後生動物において広く保存されているDNA修復過程に関与するタンパク質のリクルートメントを、細胞内でも個体内でもゲノム編集サイトの偏りのない同定に利用可能なことを示し、Discovery of In Situ Cas Off-targets and VERification by Sequencing (DISCOVER-Seq)と命名した。
  • 研究チームははじめに、K562細胞において、VEGFAを標的としたCas9-RNPによるDSBにおけるDSB修復因子の動態のChIP-seq解析と、HBB遺伝子を標的とするCas9-RNPによるindels生成のChIP-qPCRによる時系列解析から、DNA修復因子MRE11がCas9によるDSBのモニターに最適であることを同定した (MER11参考文献 "2本鎖DNA切断修復機構においてその経路はMRE11のもつヌクレアーゼ活性により決定される" ライフサイエンス新着論文レビュー, 2014)。
  • MRE11 ChIP-seqは一塩基分解能でCas誘導DSBを同定可能とする。また、MRE11がDSB修復因子の中でも一連のヒト細胞株とマウス細胞株で安定して高発現することを確認した。
  • DISCOVER-seqは、ChIP-Seqから得られるDNA修復因子MRE11の分布とそれを解析するコンピューター解析パイプラインBlunt END FindER (BLENDER)で構成されている。
  • DISCOVER-Seqは、SpCas9、HiFI Cas9、As12aなどのヌクレアーゼと種々のsgRNA/遺伝子座について、ヒト細胞株、患者由来iPS細胞、マウス細胞株におけるオフターゲット編集サイトの同定を実現し、加えて、アデノウイルスを介したマウスin vivo遺伝子編集におけるオフターゲット編集同定も実現した。
2. 温度が成長速度制御を介して、P. aeruginosaにおけるCRISPR-Cas活性を調節する
[出典] "Temperature, by Controlling Growth Rate, Regulates CRISPR-Cas Activity in Pseudomonas aeruginosa" Høyland-Kroghsbo NM, Muñoz KA, Bassler BL. mBio. 2018-11-13
  • CRISPR-Casシステムは侵入する遺伝因子からバクテリアとアーケアを保護する獲得免疫システムである。P. aeruginosaでは、菌密度が高まりバクテリオファージ感染リスクが高まるとクオラムセンシング (quorum sensing, QS)を介して、CRISPR-Casシステムが活性化する。
  • プリンストン大学の研究チームは今回、温度もP. aeruginosaのCRISPR-Casシステムのキューになることを見出した。すなわち、環境温度が低下するほどアダプテーション(外来配列からのスペーサ獲得)が亢進することを見出した。
  • 環境温度はCRISPR-Cas9送達に使用したプラスミドのコピー数やCsy4の量には影響を与えず、この温度依存性の主因は、低温でP. aeruginosaの増殖速度が低下し、ひいては、細胞分裂に至るまでにCRISPR-Cas9複合体がより長時間広範囲にわたり標的を探索・切断することが可能になることであった。また、QSと低温はCRISPR-Casの活性に相乗的に作用する。
3. [ガイドライン]CRISPR/Cas9ゲノム工学へのベストアプローチ
[出典] "Towards best-practice approaches for CRISPR/Cas9 gene engineering" Van Campenhout C [..] Gueydan C, Kruys V. bioRxiv. 2018-11-14.
  • CRISPR/Cas9技術によって、疾患モデルの作出、薬剤スクリーニング、治療法の開発、迅速診断および転写調節が実現されてきたが、ゲノム編集の結果は実験条件や対象生物に大きく左右される。Diagenode社とUniversité libre de Bruxellesのベルギーの研究チームが、CRISPR/Cas9によるゲノム編集の効率と制度を最適化するためのガイドライとツールを紹介:標的遺伝子座の解析;送達手段;ガイドRNAの効率と特異性;展望

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット