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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2016年08月03日
 [レビュー]タンパク質間相互作用(PPI)を標的とする創薬

  • Corresponding authors: Chris Abell; John Skidmore (University of Cambridge)
  • タンパク質間相互作用(PPI)に直接作用する低分子医薬品は稀であり、PPIは時にアンドラッガブル(undruggable)とされてきたが、近年、低分子による阻害が可能なPPIのクラスが存在することが明らかになってきた。例えば、球状タンパク質とパートナーとなるタンパク質のペプチド一本鎖との相互作用のクラスであり、球状タンパク質(globular proteins:以下GP)の表面のポケットに結合することで相互作用を阻害する低分子である。また、PPIのクラスそれぞれに適した創薬戦略が存在することが示唆されている。
  • 著者らは今回、アロステリック作用サイトや触媒サイトを標的とする低分子よりはむしろPPIに関与する界面に直接相互作用しPPIを阻害する低分子に焦点を絞って、PPIの構造生物学とクラス分類およびPPI阻害剤の探索法をレビューし、PPIのクラスごとに創薬例を紹介。
  • 構成
    • PPIsの構造生物学と分類:構造生物学の手法;PPIのホットスポット;PPIsの分類(GPとGP;表面のコンフォメーション変化を伴うGPとGP;GPとペプチド鎖;コンフォメーション変化するGPとペプチド鎖;ペプチド鎖とペプチド鎖);PPIクラスごとのドラッガビリティー(druggability)
    • PPI阻害剤探索:ハイスループット・スクリーニング;フラグメント・スクリーニングと最適化;ラショナル・デザイン(ペプチドとペプチド模倣薬(peptidomimetics));コンピュータによる解析と設計;リード最適化
    • 事例(表2に臨床試験が進みつつあるPPI阻害剤36種類がまとめられている)
      • 不連続なエピトープを介したGPとヘリックスペプチドの相互作用:BCL-2ファミリーとBH3ドメイン
      • 連続的エピトープを介したGPとペプチドの相互作用:XIAP–SMACKEAP1-NRF2
      • 不連続なエピトープを介したGPとGPの相互作用:IL-2とIL-2R
      • アンカー残基を介したGPとペプチドの相互作用:ブロモドメインその他のエピゲノム読み出しドメイン
      • 展望:PPI阻害剤の可能性が示されつつある;これからの10年、PPI阻害剤が創薬の主流になるであろう;PPI創薬には構造生物学と生物物理の手法が重要であり、また、リピンスキーの「ルール・オブ・ファイブ」から外れた化合物も視野に入れる必要がある。
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