2021-05-31 項目1のbioRxiv 投稿が,Biophysical Journal 論文として刊行されたことに伴い,その書誌情報を追記: "CRISPR-based DNA and RNA detection with liquid-liquid phase separation" Spoelstra WK [..] Reese L. Biophys J. 2021-04-06. https://doi.org/10.1016/j.bpj.2021.02.013
2018-11-27 初稿
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1. 液-液相分離を利用して、CRISPR技術によるDNA/RNA検出を、簡便かつ安価に
2018-11-27 初稿
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1. 液-液相分離を利用して、CRISPR技術によるDNA/RNA検出を、簡便かつ安価に
[出典] "CRISPR-based DNA and RNA detection with liquid phase separation" Spoelstra WK [..] Brouns SJJ, Reese L. bioRxiv. 2018-11-20.
Cas12aとCas13aはcrRNAとの複合体として標的核酸配列に結合する際に、それぞれ、細胞内のssDNAとRNAを無差別に切断することから、核酸の高感度検出法への利用が進められている [関連crisp_bio記事:2018-02-23 CRISPRによる核酸検出・診断(DETECTRとSHERLOCK)]。
- オランダの研究チームは今回、特定のDNAおよびRNA分子が長さに依存して相分離する [長い核酸ポリマーと正電荷を帯びた高分子電解質が,ポリマーリッチな相とポリマー欠失相とに分離する液-液相分離 (liquid-liquid phase separation: LLPS)/複合コアセルベーション]を利用して,蛍光標識不要 (ラベルフリー)な検出系を開発した.
- LLPSにより溶液の濁度が増すがその変化は裸眼で判定可能であり、Cas12a/Cas13aの活性と組み合わせることで、DNA/RNAの存否を裸眼で判定可能になる。研究チームは今回、長い核酸ポリマーを利用することで安定なLLPSが発生することを見出し、Cas12と (dT)あるいはCas13aとpoly(U)の組み合わせで、標的のDNAあるいはRNAの存否を裸眼で判定可能なことを示した:crRNA-Cas12a/Cas13a + 試料 + poly(dt)/poly(U) → (標的核酸存在) → crRNA標的に結合 → Cas12a/Cas13a活性化 → poly(dt)/poly(U) 分解 → LLPS → 濁度上昇 → 肉眼判定
2. シヌクレイノパチー耐性ドーパミン作動性(DA)ニューロン作出
[出典] "Engineering synucleinopathy-resistant human dopaminergic neurons by CRISPR-mediated deletion of the SNCA gene" Chen Y, Singh Dolt K, Kriek M, Baker T, Downey P, Drummond NJ, Canham MA, Natalwala A, Rosser S, Kunath T. Eur J Neurosci. 2018-11-25.
- パーキンソン病療法として、hESCsやiPSCsから分化させた中脳DAニューロン (mDA)を移植すると、in vivoで機能性mDAに成熟することが、前臨床試験が実証された。しかし、ヒト胎児の中脳細胞での臨床試験では、レビー小体の発生が見られ、移植片対宿主病のリスクが示唆されていた。U. Edinburgh大学などの英国・ベルギーの研究グループはレビー小体形成を回避可能な手法を開発した。
- 研究グループは、クリニカル・グレードのhESCsにおいて、CRSIPR/Cas9nを利用してα-シヌクレインをコードするSNCA遺伝子の変異体SNCA+/–とSNCA–/–細胞を作出し、中脳DAニューロンに分化させ、続いて、中脳DAニューロンに組換えα‐シヌクレイン線維(PFFs)を加えることによるレビー小体の形成を、セリン129のリン酸化(pS129‐αSyn)を指標として検証した。
- その結果、野生型ニューロンではpS129‐αSynが存在するタンパク質凝集体が形成された一方で、SNCA変異体は凝集体に対する耐性を示すことを同定した。
3. Pseudomonas fluorescensのバイオフィルム形成に関与する遺伝子群をCRISPRiで探る
[出典] "Interrogation of genes controlling biofilm formation using CRISPR interference in Pseudomonas fluorescens" Noirot-Gros MF, Forrester S, Malato G, Larsen PE, Noirot P. bioRxiv. 2018-11-22.
- 微生物のバイオフィルム形成には、運動性から固着性への遷移、細胞外高分子物質(Extracellular polymeric substances:EPS) の生産、および複雑な3次元構造構築といった過程に多くの遺伝子群が関与している (バイオフィルム形成過程についてWikipedia引用下図参照)。
- Argonne National LaboratoryとU. Illinois at Chicagoの研究チームは今回、シュードモナス・フルオレッセンスのSBW25株、Pf-5株およびPfO-1株を対象として、CRISPRi技術によるバイオフィルム形成に関与する遺伝子の機能解析が可能なことを示した。
- SBW25株では、GacA/GacS二成分情報伝達システムと、環状ジグアニル酸一リン酸(cyclic diguanosine monophosphate / cyclic bis (3’->5’) diguanylic acid、c-di-GMP)に制御される遺伝子をCRISPRiでサイレンシングすることで、先行研究においてさまざまなシュードモナス菌について遺伝子不活性化がもたらしていた表現型が再現された。
- さらに、共焦点レーザー顕微鏡によるバオフィルム観察を組み合わせることで、バイオフィルムの構造とEPS生合成の新たな特徴、ならびに、PFLU1114 タンパク質によるバイオフィルム形成阻害を、同定した。
4. CRISPR/Cas12aによる遺伝子タギングを施した酵母ライブラリー作出法CASTLING
[出典] "Pooled clone collections by multiplexed CRISPR/Cas12a-assisted gene tagging in yeast" Buchmuller BC [..] Knop M. bioRxiv. 2018-11-20.
- CASTLINGは、CRISPR/Cas12a (Cpf1)-assisted tag library engineeringに由来する名称であり、CASTLING用に設計したコンストラクトを ‘selfintegrating cassettes’ (SICs)と命名;SICとCas12aを送達し、DNA切断と相同組換え修復を介してORFのC末端にSICを挿入 (原論文Figure 1から引用した下図左参照);転写開始点/終結点における遺伝子編集に適したA/TリッチなPAMを認識する Francisella novicida U112を使用
- 標的とする遺伝子座ごとに、部位特異的相同アーム (HA) とcrRNAを設計・合成したオリゴヌクレオチドのプールを合成・構築、SICカセット・プールへとリコンビアニングし (原論文Figure 2から引用した上図右参照)、酵母に導入することで、ORFにタグ付けされた酵母細胞のライブラリーが構築され、フェノタイプスクリーンとAnchor-seqを利用した遺伝型判定へと進む。
- CASTLINGにより、90%を超えるクローンが正しくタグ付けされたプール型ライブラリーを1回の形質転換で構築可能であり、また、数百の遺伝子を1ステップでタグ付け可能である。
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