2019-03-02 crisp_bio注: 項目1のbioRxiv投稿はScienceから2019-02-28に出版
1. 一塩基編集(BE3)はオフターゲットSNVsを顕著に誘発する
[出典] "Base editing generates substantial off-target single nucleotide variants" Zuo E, Sun Y, Wei W, Yuan T, Ying W, Steinmetz LM, Li Y, Yang H. bioRxiv. 2018-11-27. "Cytosine base editor generates substantial off-target single-nucleotide variants in mouse embryos" Zuo E,  Sun Y, Wei W, Yuan T [..] Steinmetz LM, Li Y, Yang H. Science. 2019-02-28.
  • ゲノム編集技術の臨床展開に必須であるオフターゲット編集の評価は簡単ではない。個体・個人に特有なSNPsが存在するためである。上海生命科学研究院、中国农业科学院深圳农业基因组研究所、复旦大学、上海产业技术研究院、中国科学院大学、EMBLおよびStanford U.の研究グループは今回、自然発生SNPsの影響を排除可能なオフターゲット変異検出法 GOTI (Genome-wide Off-target analysis by Two-cell embryo Injection)を開発・検証した。
  • オフターゲット編集の評価法としてこれまで、HTGTSGUIDE-seqCIRCLE-seqが開発されてきたが、これらはオフターゲットSNVs検出に対応していなかった。
  • 具体的には、Ai9 (CAG-LoxP-Stop-LoxP-tdTomato) マウスの2細胞期胚において、CRISPR-Cas9またはBE3、あるいはコントロールとしてのCre mRNAによる編集を加えた割球と、編集を加えなかった割球に由来するE14.5期胚の細胞集団の全ゲノムシーケンシングの結果を、比較した。
  • CRISPR-Cas9のオフターゲットSNVs発生率は自然突然変異率とほぼ同程度 (平均 10.5)であった。ただし、大規模な欠損や染色体転座を否定するものではない。
  • BE3のオフターゲットSNVs発生率はCRISPR-Cas9の20倍 (平均 283)に及び、BE3の生物医学応用に懸念をもたらす結果となった。
2. Cas9遺伝子編集によるオンターゲット変異プロファイルのハイスループット測定と編集結果予測Webツール開発
[出典] "Predicting the mutations generated by repair of Cas9-induced double-strand breaks" Allen F, Crepaldi L [..] Parts L. Nat Biotechnol. 2018-11-27.
  • CRISPR-Cas9が誘起する二本鎖切断 (DSB)の修復過程で発生する変異は、ランダムな現象ではなく、標的部位のDNA配列に依存することが知られている。Sanger Inst.、U. Cambridgeならびに英国Dementia Research Inst.の研究グループは今回、コンテクスト(標的配列の左右に隣接する配列;ツイートから引用し下図のグレーのバー)が編集結果に与える影響の解明を試みた。
  • 実験手法:6,568種類のgRNAsをもとに、hU6プロモーターとgRNAのセットと、gRNAの標的配列と可変コンテクスト (79-nt)のセットからなるコンストラクト 41,630種類を合成し、Cas9を発現する細胞へ送達し、Cas9による標的切断を誘導し、7日間培養後にゲノムDNA抽出を経て標的配列を増幅・シーケンシングし、10の9乗種類を超える変異データを特定;Cas9をはじめとするエフェクター複数について、K562細胞をはじめとする多様な細胞にて実験
  • 実験結果:再現性のある変異のほとんどが1塩基挿入、短い欠損またはマイクロホモロジー末端結合を介したより長い欠損;gRNAごとに細胞型に特異的な変異プロファイルを示す傾向あり
  • 予測アルゴリズム:このハイスループットな実験結果に基づき、Cas9編集に由来する変異を予測するWebツール FORECasT(Favored Outcomes of Repair Events at Cas9 Targets)を開発提供 (下図はWebサイト画面2018-11-28キャプチャ)FORECasT
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