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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Human Intestinal Allografts Contain Functional Hematopoietic Stem and Progenitor Cells that Are Maintained by a Circulating Pool" Fu J [..] Sykes M. Cell Stem Cell. 2018-11-29.
  • ドナーから腸管移植を受けた患者 (レシピエント)の血液細胞はキメラ状態になることが知られており、ドナーとレシピエントの造血細胞が共存することが示唆されていた。
  • 先行研究で、ドナーT細胞のマクロキメラリズム (macrochimerism)を同定していたコロンビア大学とマウント・シナイ・アイカーン医科大学の研究チームは今回、腸管移植患者21人のキメラ末梢血液細胞を5年間にわたって分析し、腸管移植に伴うキメラ血液細胞は、ドナー腸管組織に存在していたHSPCsに由来することを明らかにした。
  • ドナー由来の造血幹細胞 (HSCs)ならびに多分化能を備えた様々な前駆細胞 (multipotent progenitors)を、回腸粘膜、パイエル板、腸間膜リンパ節および肝臓で検出した。
  • ドナー腸管組織のHSPCsは、血液循環を介して、レシピエント循環血液中にレシピエントのHSPCsへと徐々に置換されていった。
  • 腸のHSPCsのフェノタイプは骨髄のHSPCsに類似し、また、in vitro/in vivo分化能を備えていた。
  • レシピエント内を循環するドナーT細胞は、レシピエントのリンパ器官で選択を受けて免疫寛容を獲得しつつ機能は維持していた。
  • 今回の研究結果は、HSPCsが骨髄以外に腸管にも存在し、腸管移植にあたり、ドナーの血液細胞とレシピエントの血液細胞の間に免疫クロストークが成立し、移植に伴う拒絶反応と移植片宿主病 (graft versus host disease, GVHD)が抑制されることを意味する。
  • ヒトの腸管移植 (Intestinal transplantation, ITx)は末期の腸管不全患者にとって唯一の治療法であるが、~50%が5年後に移植不全に到り、また、多臓器移植(multivisc- eral transplant, MVTx)の一環として行われる腸管移植の成功率は単独腸管移植 (ITx performed in isolation, iITx)よりも低い。また、移植患者の5%-9%に移植片宿主病 (graft versus host disease, GVHD)が発症する。今回の研究結果は、腸管移植にあたり免疫抑制剤の使用をドナー由来HSPCsを増量することで抑制する手法の可能性を示唆する。
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