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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2016年10月19日
[PDIS]アラート:ペンブロリズマブとPD-1の複合体の高分解能構造
  • Corresponding authors: 野村紀通(京都大学);岩田 想(京都大学/SPring-8
  • ペンブロリズマブ(KEYTRUDA®)は、免疫チェックポイントタンパク質PD-1を標的とするヒト化抗体であり、FDAは2015年に進行悪性メラノーマ治療薬として、続いて、非小細胞肺癌として、迅速承認し、引き続き注目を集めている。
  • 2016年6月に、PD-1の細胞外ドメイン(以下, PD-1ECD)とペンブロリズマブのFabフラグメント(以下、PemFab)の複合体構造(PDB ID 5JXE)が解かれた。しかし、分解能が2.9 Åと低いため、親和性と特異性に決定的な影響を与える治療用抗体と標的との間の水分子に関する情報が得られなかった。
  • 研究チームは今回、ペンブロリズマブのFvフラグメント(以下、PemFv)とPD-1ECD の複合体構造を分解能2.15 Åで解き、水分子を介した水素結合を含むPemFvとPD-1ECD の相互作用の精密なマッピングを実現した(参考図 Figure 1 参照)。
  • 精密な構造情報に基づいて、Rosetta PeptideriveプログラムによってPemFvのAla97からTyr109までの13残基のセグメントが複合体結合エネルギーに最も寄与することを見出し、この“hot segment”から環状ペプチドを設計し、PD-1ECDとの複合体モデルを構築した(参考図 Figfure 4 参照)。PRODIGYプログムで計算した解離定数は5.6 × 10-7 Mであった。この環状ペプチドは、より小型のPD-1/PD-L1パスウエイ阻害剤開発の出発点となる。
  • この高分解能の複合体構造によって、ペンブロリズマブによるPD-1の拮抗作用の分子機構が明らかになり、また、 今後のより高性能な抗PD-1療法の合理的な設計への道が拓かれた。
41770001 41770002

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