[出典] "Multiplexed orthogonal genome editing and transcriptional activation by Cas12a" Breinig M [..] Tschaharganeh DF. Nat Methods. 2018-12-17.

先行研究1
[出典] Cas9による遺伝子編集・転写活性化・転写抑制:"Cas9 gRNA engineering for genome editing, activation and repression" Kiani S, Chavez A, Tuttle M [..] Weiss R, Church G. Nat Methods. 2015 Nov;12(11):1051-4. Online 2018-03-19.
  • MITのRon WeissとHarvard UのG. Churchの研究グループは、Cas9の切断活性がgRNAの長さが16-nt以下で劇的に低減することに注目し、Cas9に転写活性化ドメインVPRを融合したCas9-VPRについて、20-ntのgRNAと組み合わせた場合はDNA切断・変異誘導活性を、14-ntのgRNAと組み合わせた場合はdCas9-VPRのCRISPRaと同様に遺伝子の転写活性化をもたらすことを、ACTC1TTNlncRNAMIATおよびヘモグロビンγ1サブユニット遺伝子HBG1を標的として実証した。
  • さらに、単一のCas9に標的の遺伝子ごとに長さの異なる (20-ntと14-nt)のgRNAsを多重に組み合わせることで、同時に、特定の遺伝子へ変異を導入し、他の遺伝子の転写を活性化することが可能なことを示した。
先行研究2
[出典] crRNAアレイを利用したCas12a(当時はCpf1)による多重遺伝子編集:"Multiplex gene editing by CRISPR–Cpf1 using a single crRNA array" Zetsche B, Heidenreich M, Mohanraju P [..] van der Oost J, Zhang F. Nat Biotechnol. 2016-12-05.
  • John van der Oost (Wageningen University)とF. Zhang (Broad Institute)らの研究グループは、Cas12a (当時はCpf1)の特徴を生かして、Cas12a自身でCRISPRアレイからcrRNAを生成 (切断・成熟)する手法を開発し、遺伝子編集の多重化をCas9による多重化よりも簡便に実現可能なことを示した。
  • すなわち、Cas9の場合は標的ごとにsgRNAの発現カセットを用意する必要があるが、Cas12aの場合は、単一のプロモーターのもとにpre-crRNAを多重に組み込んだCRISPRアレイの発現カセットを用意すればよい。
DKFZのD. F. Tschaharganehらの成果
  • Cas12aを短いgRNAと組み合わせると活性を失うことが知られていたが、その原因はCas12aと標的DNAとの結合が阻害されるからではないことが明らかにされたことから、研究チームは、先行研究1のCas9を、先行研究2の特徴を帯びたCas12aに置き換えて実験を進め、Cas12a-VPRが、20-ntのcrRNAでDNA切断活性を、14-ntのcrRNAで転写活性化をもたらすことを確認した。
  • その上で、CRISPRアレイを利用することで、HEK293細胞とモデルマウスにおいて、遺伝子への変異導入と遺伝子の転写活性化を同時に実現可能なことを示した。なお、実験はAcidaminococcus sp. BV3L6由来AsCas12aとLachnospiraceae bacterium ND2006 (Lb)由来のCas12aで行われた。