1. 送達法:pH-応答性多機能アミノ脂質*とCRISPR/Cas9ナノ粒子を作成・評価
[出典] "Synthesis and Evaluation of pH-Sensitive Multifunctional Lipids for Efficient Delivery of CRISPR/Cas9 in Gene Editing" Sun D [..] Lu ZR. Bioconjugate Chem. 2018-12-24. (*) (1-aminoethyl)iminobis[N-(oleicylcysteinyl-1-amino-ethyl)propionamide] (ECO)
  • アミノ脂質ECOとCRISPR/Cas9システムのDNAプラスミドとのナノ粒子は、100-200 nmのサイズで、溶血性はpH依存 (7.4で最小;5.5と6.5で上昇)、N/P(アミン/リン酸)比10で細胞障害性が小さい。
  • NIH3T3/GFP細胞においてCas9とsgRNAの発現はいずれも脂質の構造に依存
  • し(4.4 - 33%)、GFPのノックダウン率は、タンパク質で50%、mRNAで80%に達した。
2. 特許:Cas9とTREX2の共発現による標的変異誘発法
Date of grant 2018-12-18. Inventors Stark JM, Yanez D. Assignee City of Hope.
  • crisp_bio注:Cas9-TREX2融合タンパク質がDSB修復に与える影響については例えば、"Mutations generated by repair of Cas9-induced double strand breaks are predictable from surrounding sequence (bioRxiv. 2018) Figure 5参照
3. 疾患モデル:家族性アルツハイマー病モデル細胞としてAPP遺伝子にヘテロ型のV717IまたはKM670/671NLの変異を帯びたiPSC細胞樹立
[出典] Lab Resource "Generation of two iPSC lines with either a heterozygous V717I or a heterozygous KM670/671NL mutation in the APP gene" Frederiksen HR [..] Freude K. Stem Cell Res. 2018-12-24.
  • CRISPR-Cas9により、健常者由来iPSC細胞にヘテロ型のV717IとKM670/671NLの変異を導入
4. 疾患モデル:レッシュ・ナイハン症候群マウスモデル作出
[出典] "New personalized genetic mouse model of Lesch-Nyhan syndrome for pharmacology and gene therapy"  Kalmykov VA [..] Lukyanov NE. Research Results in Pharmacology. 2018-12-15.
  • ロシアで発見されたHPRT1遺伝子の第1エクソンの81Val欠損による患者の個別化マウスモデルをCRISPR/Cas9技術で開発
5. 疾患モデル:[レビュー]マカクとマーモセットをはじめとする非人類霊長類(NHP)遺伝子改変モデル樹立の動向
[出典] Review "Generation of genetically engineered non‐human primate models of brain function and neurological disorders" Park JE, Silva AC. Am J Primatol. 2018-12-26.
  • 脳機能と神経疾患の研究資源として有用な遺伝子改変NHPモデルの研究開発をレビュー:外来遺伝子過剰発現モデル (表1)、遺伝子破壊モデル (表2)、著者が開発したマーモセット・モデルなど
6. 遺伝子治療:CRISPR体細胞ゲノム編集による療法を、鎌状赤血球症コミュニティーはどのように見ているのか
[出典] "A CRISPR focus on attitudes and beliefs toward somatic genome editing from stakeholders within the sickle cell disease community" Persaud A, Desine S, Blizinsky K, Bonham VL. Genet Med. 2018-12-24.
  • SCDに対して現時点で唯一の根治的治療である造血幹細胞移植 (Hematopoietic stem cell transplantation, HSCT)は90%を超える無再発生存率を実現するが、HSCTの適用基準を満たす患者は極めて限られている。また、過去40年間、成人SCD患者の平均余命が伸びてきた一方で、若年死は続いている。
  • SCDはβ-グロビン遺伝子の第6エクソンの単一変異 (A→T)が病因であることから、 CRISPR技術を介した体細胞ゲノム編集療法の最初の標的とされている。すでに、胎児型ヘモグロビン (HbF)の発現を誘導する手法による治験が始まり (関連crisp_bio記事:2018-10-11 米国FDA、CRISPR TherapeuticsとVertexの鎌状赤血球症のCTX001治験保留を解除)、また、患者骨髄から造血幹細胞・前駆細胞 (HSPC)を除去し、ex vivoで病因変異をCRISPR技術で修復し、修復細胞を増殖する技術の研究も進められている。
  • NHGRI/NIHの研究チームは今回、CRISPR技術SCD療法の臨床応用が順調に展開することを目指して、医療から阻害されてきた歴史を帯びているSCDコミュニティ (患者6グループ、患者の両親6グループ、ならびに医師3グループ)の意識調査を、教育用ビデオ - ゲノム編集と将来の治験への参加に関する調査票記入 - フォーカス・ グループ・ インタビューを経て、2017年12月に実施した。
  • 調査参加者は、ゲノム編集技術によるSCDの新たな治療法に希望を見出すとともに、療法の負担と不確実性および公平なアクセスに不安を抱いていた。
7. 生命倫理・規制:オーストラリアにおける胚遺伝子編集の法的位置付け
[出典] "Legality of Embryonic Gene Editing in Australia" Taylor-Sands M, Gyngell C. J Law Med. 2018-12-26
  • 既存のProhibition of Human Cloning for Reproduction Act 2002 (Cth)とResearch Involving Human Embryos Act 2002 (Cth) では不十分であり、法改正が必要