[出典] "Retraction of DNA-bound type IV competence pili initiates DNA uptake during natural transformation in Vibrio cholerae" Ellison CK, Dalia TN, Vidal Ceballos A, Wang JC, Biais N, Brun YV, Dalia AB. Nat Microbiol. 2018 Jul;3(7):773-780. Online 2018-06-11.
  • バクテリアでは、外部から遺伝子を取り込む遺伝子水平移動 (horizontal gene transfer, HGT)を介して、進化し、抗生物質耐性を獲得し、抗原を多様化し、病原性因子を獲得する自然形質転換 (natural transformation)が常に起こっている。
  • 自然形質転換 機序として、バクテリアが外部DNAをその細胞表面から伸びる微細な器官pili (ピリ)を介して外部DNAを捉え、引き付け、外膜を通してDNAを細胞質へと取り込とするモデルが、広く受け入れられている。一方で、ピリは外部DNAに結合せずピリが外膜の分泌ポアを開ことで外膜を通した外来DNAの細胞質への拡散が進むとするモデルも提唱されている。
  • 2013年にR. Laurenceauらが (PLoS Pathog, 2013)、Streptococcus pneumoniaeにおいてアフィニティークロマトグラフィーによってDNAがピリと共精製されることを報告したが、DNAとピリの間の確率的な共局在と直接結合との判別には至らなかった。Indiana UniversityとCUNY Brooklyn Collegeの研究チームは今回、Vibrio choleraeにおいて、ピリ タイプⅣ (Type Ⅳ pili)が伸長しその先端で外部の二本鎖DNAを捉えた後に、収縮して先端に結合したDNAを細胞表面へと引き付ける動態と、この収縮が時空間的に外来DNAが内在化に共役することを、蛍光顕微鏡で観察することに成功した (Brun Lab 2018-06-22ツイート参照)。
  • crisp_bio注:ピリ タイプⅣの合成・伸長・収縮のモデル図 (Wikipediaから引用)参照Type IV Pilus Twitching Motili.
  • 具体的には、先行研究で開発していた手法 (Science 2017)により、ピリをAF488-malで、DNAをCy3またはMFP488で、ペリプラズムにおいてDNAに結合するComEAをmCherryで、それぞれ標識し、蛍光顕微鏡で観察した。