(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160415)
- [短報] CRISPR-onシステムによるヒト内在INS 遺伝子の活性化:Federico Pereyra-Bonnet (University Institute of the Italian Hospital)
- エピジェネティクスの進展とともに、1型糖尿病のような複雑な疾患に対する新たな治療法を設計することが可能になってきている。今回、特定の遺伝子の発現を亢進するCRISPR-onシステム(Cell Research 2013)によって、遺伝子活性化に関わるエピジェネティック・マークを調節可能なことを示し、患者由来細胞(特に1型糖尿病患者由来の線維芽細胞)に対してCRISPR-onシステム(dCas9-VP160)がin vitro で作用することを実証。
- 転写活性化因子を融合したCRISPR-onシステム(dCas9-VP160)を利用して、完全にメチル化されたプロモーターによりサイレンシングされているヒト内在INS 遺伝子を活性化することを見出した。
- また、複数のsgRNAが遺伝子活性化に対して相乗効果を示し、転写活性化が21日まで継続することも見出した。
- エピジェネティック・プロファイルに関しては、標的としたプロモーター遺伝子の状態は変化しなかったが、H3K9acのレベルが変化した。
- [論文] CRISPR/Cs9によるバイシストロニックIns1 -cre ノックインマウスの開発:杉山文博 (筑波大学)
- インスリン遺伝子Ins1 のストップコドンの直前に2A -cre 配列を挿入するために、CRISPRの標的配列として(5'-CTGGAGAACTACTGCAACTAAGG-3’)を選択(ストップコドン TAA;PAM配列 AGG)。
- gRNAとCas9をコードしたpX330 ベクターと2A -cre を含むプラスミドを卵母細胞に注入し、C57BL/6J-Ins1em1(cre)Utr 系統を作出
- (R26GRR x C57BL/6J-Ins1em1(cre)Utr )F1マウスの組織学的分析から、すべての膵島でcre-loxP組換えが起こり、ほとんどのインスリン陽性細胞がtdsRedの蛍光を示したことから、新系統においてβ細胞特異的な組換えが起きたことが示唆された。
- また、耐糖能に遺伝型(ホモ/ヘテロ/野生)による差異が見られなかった。
- [Letter to the Editor] 高効率・高精度な遺伝子編集を実現するCRISPR/Cas9システムの新たな改良法:
Ding Xue (Tsinghua University/University of Colorado Boulder)- ゼブラフィッシュをモデルとして、Cas9のC末端と核移行シグナル(NLS)をつなぐリンカーの選択とsgRNAの最適化によって、遺伝子編集の効率と精度が大きく向上することを見出し、さらに、1段階でのホモ接合型変異系統作出を実現。
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