(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160419)
 リキッドバイオプシー4種類のターゲット:血中循環腫瘍DNA(ctDNA);血中循環腫瘍細胞;エクソソーム;血小板
  • ctDNA
    • 細胞から遊離したDNAを血漿から抽出して、次世代PCRまたはデジタルPCR(dPCR)/ドロップレットデジタルPCR (ddPCR)で解析
    • PathwayGenomics社:CancerIntercept™ Detect (9種類のドライバーがん遺伝子の変異を2〜3週間で判定)
    • Dennis Lo:2013年、1,300人の健常人のリキッドバイオプシーからステージ1の上咽頭がん患者3名を特定し、その後20,000人の検査(未報告)を実施。
    • 転移の早期発見:小規模コホートであるが、乳がん患者を対象とするctDNAのdPCRによって、転移の症状に先立って平均11ヶ月(0〜37ヶ月)あるいは8ヶ月(中央値)前に転移を予測可能であったとする報告あり。
    • DNA断片の長さや組織特異的なマーカの利用:正常細胞由来のDNAは100〜2200 bpの長さでヒストンに巻き付いているが、多くの癌において腫瘍細胞由来のDNAはより短く、極めて短いDNAの濃度が高さは転移と相関;組織特異的マーカによる腫瘍DNAが由来する組織を同定
    • EBウイルスが病因である鼻咽頭癌の場合は1回のテストの経費25ドルのdPCRで判定可能な明確な特有の変異が存在するが、多くの癌DNAの変異が未だ必ずしも明確にされておらず、薬剤耐性が新奇変異を起こす可能性がある。従って、すべての癌に関与するすべての変異を検出するには、dPCRに加えて、次世代シーケンシグ解析も必要。
  • 血中循環腫瘍細胞
    • 1869年に発見されて以来、40種類以上の腫瘍細胞分離装置が開発されその中で唯一Veridex社のCellSearch®がFDA認可。
    • 当初、腫瘍細胞の数が癌の悪性度のマーカと考えられていたが、アメリカ臨床腫瘍学会 (ASCO)は現在、腫瘍細胞数を治療の手かがりとすることを推奨していない。
    • 腫瘍細胞のDNA/RNAシーケンシングによる変異解析や、分離した腫瘍細胞を培養増殖しさらにマウスへ移植し、薬剤耐性などのin vivo 検査を診断・治療にフィードバックすることが考えられるが、検査に要する日数とコストが課題。
  • エクソソーム
    • 腫瘍細胞を含むあらゆる細胞から分泌され、DNA, RNAならびにタンパク質を含む微小顆粒
    • Exosome Diagnostics:ExoDx™ Lung (ALK) 腫瘍細胞由来エクソソームのRNAにおけるEML4-ALK変異を検出し肺がんを診断;肺がん診断用遺伝子の拡張と、尿由来エクソソーム解析による前立腺がん診断テストを準備中。
    • 腫瘍由来エクソソームの分離技術が課題。
  • 血小板
    • Tom Würdinger/thromboDx:1,000人/10種類のがんコホートにおいて、血小板におけるRNAプロファイリングが診断に有用なことを実証中。イルミナ社は2016年2月にthronboDxを買収。
  • それぞれ特徴があるリキッドバイオプシー技術の洗練と成熟が待たれる。
    [情報拠点注] 今回のTechnology Featureの著者はサイエンスライターのKelly Rae Chi
TECHNOLOGY FEATURE→Kelly Rae Chi “The tumour trail left in blood.” Nature. 2016 Apr 14;532(7598):269-71.