(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160422)
  • AstraZeneca傘下の創薬ベンチャー企業Medlmmuneは2016年4月22日、他機関と連携してAstraZenecaの治験由来の500,000人を含む200万人までのゲノム情報と健康・医療情報を統合したゲノム創薬戦略を発表した。AstraZenecaはこのプロジェクトによって、疾患生物学について新たな知見を得、稀な遺伝子変異に注目しつつ創薬ターゲットを同定し、また、その成果を、治験参加者の選択さらに個別化医療への利用していくことを目指している。
  • 他機関との連携
    • Craig Venterが率いるHuman Longevity, Inc (HLI).(米国):AstraZenecaの500,000DNAを全ゲノムシーケンシングし機械学習など最新のデータ解析を実施;100万人のゲノム情報と健康医療情報を提供;これまでに医療情報を伴った26万人の全ゲノム解析を完了し、最終的には1,000万人ゲノムを目指している。
    • The Wellcome Trust Sanger Institute:創薬専門家を含むAstraZenecaの研究チームを指導;診断に有用な新規標的とバイオマーカを同定
    • The Institute for Molecular Medicine Finland (FIMM):稀な遺伝子変異の頻度が比較的高く、また、国のバイオバンクによる健康・医療情報が整っていることが知られているフィンランド・コホートの遺伝子解析
    • データベースセンターなどを担う自社のCentre for Genomics Researchをケンブリッジに設立
  • Nature Newsは、C. Venterと、Astrazenecaのアドバイザーであるコロンビア大学のDavid Goldsteinのコメントを引用している。
    • C. Venter: データベース中に1例しか存在しないDNA変異は1億2,000万件に達している;HLIではゲノム配列から身長、体重、眼の色、髪の色を予測し、おおよその顔貌を描くことが可能になっており、これらの形質は稀な変異に潜んでいる。
    • Goldstein: これまでゲノム創薬は失望をもたらしてきたが、再び「ゲノム創薬」と唱える時が来た;ゲノムシーケンシングが高速・廉価になり、バイオインフォマティクスツールが進化し、幹細胞生物学とゲノム編集技術開発が進展し、ゲノム配列の変異が生細胞に与える影響を特定することが、これまでに比べて、はるかに容易になっている。