2021-10-12 記事タイトルを不妊虫放飼法をCRISPR遺伝子編集を介してバージョンアップからCRISPR技術による次世代不妊虫放飼法pgSIT - ハエに続いて蚊にも有効へと改訂し,ネッタイシマカを対象とした論文を紹介:
pgSIT(precision guided SIT)法をネッタイシマカ (Aedes aegypti)集団の制御へと展開
[出典] "Suppressing mosquito populations with precision guided sterile males" Li M, Yang T [..] Akbari OS. Nat Commun. 2021-09-10. https://doi.org/10.1038/s41467-021-25421-w
 UCSDとUC BerkeleyにUC Santa Barbara, CALTECHなどが加わった研究グループは先行研究に続いて,pgSITを利用して,ネッタイシマカを対象とした飛行能力を欠失した雌と生殖能力を欠失した雄 (不妊オス)の生成を,どのライフステージでも展開可能にした.
  •  2023-07-07 21.37.54研究室内の実験で,生成したpgSIT不妊オスの子孫を卵または成虫として放つと,多世代の集団ケージ内で,他の個体群と競合し,抑制し,さらには排除することができることを実証した [Fig 3 引用右図参照].
  • 数理モデルは,ネッタイシマカのpgSITの卵を放出することで,地域のネッタイシマカ集団を効果的に排除することが可能なことを,示唆した.
2019-01-10 初稿
[出典] "Transforming insect population control with precision guided sterile males with demonstration in flies" Kandul NP, Liu J, Sanchez C HM, Wu SL, Marshall JM, Akbari OS. Nat Commun. 2019-01-08.
  • 不妊虫放飼 (sterile insect technique, SIT)は長年にわたり病害虫・媒介動物集団の根絶に利用されてきた環境に安全な実績ある技術である。UCSDとUC Berkeleyの研究チームは今回、放射線を利用したSITに替えてCRISPRを利用したSITを開発しprecision guided SIT (pgSIT)と命名し5f5fb5f3
  • PgSITは、Cas9を帯びた系統と、雌の生存に必要な遺伝子を標的とするgRNA雄の生殖に必要な遺伝子を標的とするgRNAを帯びた系統とを交雑することで、結果として、F1世代が不妊オスだけのみを生存させる戦略である (原論文 Fig.1 から一部引用した右図参照)。
  • 研究チームは、pgSITの性能を、ショウジョウバエにおいて100%不妊雄の集団形成を実現することで実証した。pgSITは、遺伝的に性別を決定すると同時に、子孫を100%の効率で再現性よく不妊化し、pgSITのオスは他のオスよりも優勢を維持する。
  • PgSITにより生成した特定の集団を標的とする不妊雄生成受精卵を標的地域に散布することで、標的地域の標的集団は子孫を生み出せなくなり根絶されることになる。PgSIT は、遺伝子改変の継代に依存する遺伝子ドライブよりも明快・強力・安全な技術である。