[出典] "Comprehensive identification of RNA–protein interactions in any organism using orthogonal organic phase separation (OOPS)" Queiroz RML, Smith T, Villanueva E [..] Lilley KS. Nat Biotechnol. 2019-01-03.
  • ハイスループットでRNA結合タンパク質 (RBPs)を同定するこれまでの手法はポリアデニル化されたRNAsを標的としており、ポリアデニル化されていないRNAs (lncRNA、mRNA前駆体、バクテリアのRNAs)に結合するタンパク質を捕捉することができない。また、この課題を塩基修飾で回避する手法はバイアスを伴う。
  • University of Cambridge、MRC Laboratory of Molecular BiologyならびにUniversity of Yorkの英国研究チームは今回、任意の生物においてRNA-タンパク質相互作用を網羅的に同定することを目指して、acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction (AGPC)  法をもとに、orthogonal organic phase separation (OOPS)法を開発した。
  • AGPC法は (crisp_bio注: 下図参考図参照)、サンプルを水相と有機相に分離し、RNAが水相 (aqueous phase)へ、DNAやタンパク質が有機相 (oragnic phase)に移動することを利用して、イソプレパノールを介したバイアスを伴わないRNA沈殿と、guanidinium thiocyanateを介したタンパク質変性を誘導する手法である。AGPC
  • OOPSでは、UV (254 nm)架橋によりRNA-タンパク質の付加体が形成され水相と有機相の界面の領域 (interphase)に移動すると想定し、互いに結合していないRNAsとタンパク質に加えて、界面領域からのRBPsまたはタンパク質結合RNAs (PBRs)の同定を試みた。
  • OOPSをヒトのHEK293細胞、U2OS細胞およびMCF10A細胞において検証し、読み出したタンパク質の96%がRNAに結合し、全てのlncRNAsがタンパク質と架橋されることを見出した。
  • 同定した1,838種類のRBPsには、926種類の新奇RBPs候補が含まれており、OOPSの感度は従来のRBPs同定法のほぼ100倍に達した。
  • OOPSによってまた、U2OS細胞において微小管重合阻害剤ノコダゾールによる細胞周期アレストがRNA-タンパク質相互作用に及ぼす影響を解析し、さらに、バクテリア (E. coli)のRNA-インタラクトーム (RBPome)解析も実現した。