1. [AT A GLANCE] 生物医学研究マウスモデル開発:最新技術動向 
[出典] AT A GLANCE "Generating mouse models for biomedical research: technological advances" Channabasavaiah B. Gurumurthy, Kevin C. Kent Lloyd. Dis Model Mech. 2019-01-08.
"at a glance"ポスター (原論文挿入図ダウンロード)とテキストで俯瞰2019-01-17 13.08.01
  1. ES細胞の遺伝子ターゲッティングを介したCre/loxPあるいはFlp/FRTによる条件付き変異マウス系統樹立
  2. RNAiによる遺伝子機能ノックダウン (合成マイクロRNA (amiRNA)イントロン挿入: Sci Rep 2015)
  3. 前核への直接注入を介した形質転換 (PITT法)
  4. CRISPR/Cas9を主とするプログラム可能なエンドヌクレアーゼによるマウスゲノムの編集と操作 (Easi-CRISPR法;i-GONAD法)
[参考] GONAD, i-GONAD関連crisp_bio記事
  • CRISPRメモ_2018/08/19-2 - 3. i-GONADはラットの簡便なゲノム編集in vivoツールとしても有用
  • CRISPRメモ_2018/03/04 - 1. i-GONAD:CRISPRヌクレアーゼによる安定したin situ生殖細胞ゲノム編集法
  • CRISPRメモ_2018/03/03 - 7. [ハイライト]CRISPR/Cas9ゲノム編集技術により再定義されたマウス遺伝子操作法
  • 2017-04-10 [レビュー] 動物の遺伝子組換えとゲノム編集のための接合子と胚への核酸導入法
2. CRISPR-Cas9によるマウス胎仔ゲノムのin vivo編集を実現
[出典] "Transplacental Delivery of Genome Editing Components Causes Mutations in Embryonic Cardiomyocytes of Mid-Gestational Murine Fetuses" Nakamura S, Ishihara M, Ando N, Watanabe S, Sakurai T, Sato M.IUBMB Life. 2019-01-11.
  • 防衛医科大学校・農研機構畜産草地研究所・信州大学・鹿児島大学の成果:B6C3F1マウス雌とEGFPホモ型トランスジェニックマウス雄と交配し、妊娠12.5日齢で、 尾静脈からヒト化Cas9発現ユニットとEGFPを標的とするsgRNA発現ユニットのプラスミドとFuGENE6の複合体溶液を注入し、2日後に3匹から24胎仔を得て、3胎仔の心臓に蛍光低減を見出し、経胎盤による胎仔ゲノム編集が可能であることを実証した。
3. CRISPR-Cas9システムとドナーDNAの組み合わせによる大規模な遺伝子ターゲッティングに有用な技術
[出典] "Bioproduction of single-stranded DNA from isogenic miniphage" Shepherd TR, Du RR, Huang H, Wamhoff EC, Bathe M. bioRxiv. 2019-01-16.
  • 合成ミニファージにより1,676 ntの長さのssDNA生成を実現
4. CRISPR-Cas9による初の扁形動物ゲノム編集と寄生虫の病害性抑制
マンソン住血吸虫とタイ肝吸虫の病原性抑制を実証し、CRISPR-Cas9遺伝子編集による
"顧みられない熱帯病 (スクリーンショット 2019-01-18 7.57.53
)"対処法の可能性を示唆
[出典] マンソン住血吸虫 ”Programmed genome editing of the omega-1 ribonuclease of the blood fluke, Schistosoma mansoni ” Ittiprasert W et al. eLife 2019-01-15. (bioRxiv. 2018-08-17)
  • George Washington UniversityのP. J. Brindleyをはじめとする米国、英国ならびにオランダの研究グループ;寄生虫卵に、Th2プライミングと肉芽腫形成に必要なomega-1リボヌクレアーゼ (ω1) を標的とするCRISPR-Cas9システムのエレクトロポレーションまたはレンチウイルス送達、一部の卵にはHDR用のストップコドン6個を帯びたssODNドナーも送達し、 ω1由来mRNAが80%以上低減し、ω1編集卵の溶解液においてリボヌクレアーゼの活性が消失することを見出した。
  • BALB/ cマウスに尾静脈注入したω1編集卵の周囲の肉芽腫は、野生型卵の18分の1へと縮減した。
[出典] タイ肝吸虫 ”Programmed knockout mutation of liver fluke granulin attenuates virulence of infection-induced hepatobiliary morbidity" Arunsan P [..] Brindley PJ, Haha T.  eLife. 2019-01-15. (bioRxiv. 2018-08-06)
  • George Washington UniversityのP. J. BrindleyとKhon Kaen UniversityのT. Lahaら米国、タイならびにオールトラリアの研究グループ
  • 肝吸虫 (Opisthorchis viverrini)の成長因子であるグラニュリン (Ov-grn-1)遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9を幼体と成体にプラスミドをエレクトロポレーション後、Ov-grn-1由来RNAもタンパク質が急減すること、さらに、ハムスターに感染させた幼体が胆道においてコロニーを形成し成虫にはなるが、胆管の過形成と繊維化が抑制されること、を見出した。
5. [ミニレビュー] CRISPR/Cas9で植物病害と戦う
[出典] ”MINI REVIEW "CRISPR/Cas9: A Novel Weapon in the Arsenal to Combat Plant Diseases"
Das A, Sharma N,  Prasad M. Front Plant Sci. 2019-01-15.
  • ウイルスゲノムまたは宿主因子を標的とするCRISPR/Cas9による植物ウイルス抵抗性付与;宿主因子を標的とするCRISPR/Cas9による菌類抵抗性の付与;CRISPR/Cas9による病原バクテリア耐性付与;CRISPR/Cas9技術の特徴と問題点
6. [レビュー] CRISPR/Cas9によるタマホコリカビ属細胞性粘菌のゲノム編集の最新動向
[出典] REVIEW "Recent Advances in CRISPR/Cas9-Mediated Genome Editing in Dictyostelium" Muramoto T, Iriki H, Watanabe J, Kawata T (東邦大学). Cells. 2019-01-12.

7. 蘚類のヒメツリガネゴケ・ゲノムにおいて、CRISPR/Cas9が誘導するDSBの修復にPOLQが決定的役割を果たしている
[出典] "POLQ plays a key role in repair of CRISPR/Cas9 induced double strand breaks in the moss Physcomitrella patens" Mara K, Charlot F, Guyon-Debast A, Schaefer DG, Collonnier C, Grelon M, Nogué F. New Phytol. 2019-01-13.
  • POLQは、DSBの相同組み換え修復 (HR)パスウエイを競合そしてまたはHRパスウエイを阻害することを同定した。一方で、POLQ遺伝子破壊はゲノム安定性に影響を及ぼさず、polq変異体の紫外線、MMSならびにシスプラチンなどの遺伝毒性に対する感受性はブレオマイシンを除いて野生型と同等である。POLQを欠損させることで、HRパスウエイを介した遺伝子ターゲッティング効率を向上させることが可能。
8. 遺伝子治療の成功はクリニカル・グレードのベクターの大量生産技術に依存する
[出典] "To win at gene therapy, companies pick viruses with production credentials" Sheridan C. Nat Biotechnol. 2019-01-03.
  • 遺伝子治療の先駆者であるJim Wilsonが率いるペンシルベニア大学の研究チームが2018年10月に アデノ随伴ウイルス (AAV)のカプシドに翻訳後修飾の一種である脱アミノ化が自律的に発生し、AAVの遺伝子導入効率に影響を及ぼすとする論文をMolecular Therapyに発表した ("Deamidation of Amino Acids on the Surface of Adeno-Associated Virus Capsids Leads to Charge Heterogeneity and Altered Vector Function")。
  • Wilson報告は全面的には受け入れられていないが、いずれにしても遺伝子治療に使用するベクターの標準化が必要であるという指摘がなされている。また、遺伝治療法開発企業は高品質なベクターの生産技術の開発に取り組んでいる。