(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160424)
  1. [レビュー]CRISPR/Cas9のゲノムワイド特異性の判定法と向上法:Shengdar Q. Tsai and J. Keith Joung (Harvard Medical School)
    • GUIDE-seqを開発した著者らによるCRISPR/Cas9技術の臨床応用を念頭においたCRISPR/Cas9技術の「精度」に関するレビュー
    • オフターゲット作用の判定法:オフターゲット作用予測プログラムには限界;細胞/in vitro 実験法(IDLV capture; GUIDE-seq; HTGTS (high-throughput genome-wide translocation; BLESSDigenome-seq
    • オフターゲット作用の低減法
      • CRISPR/Cas9活性自体の特異性の向上による低減;手法の比較(tru-gRNAs;gRNAの5末端にGGを付加;ダブルニッキング;FokI-dCas9融合タンパク質法(RFNs);Cas9変異体の利用(SpCas9-HF1とeSpCas9))
      • Cas9の活性時間の調節による低減Cas9とgRNAのRNPをエレクトロポーレーションで送達(比較的短時間);Cas9の分割・融合による調節;光刺激による調節
    • CRISPR/Cas9によるゲノム編集機構に関する最新の知見(構造・生化学的性質・機能)
    • 臨床応用におけるオフターゲット作用の問題:さらに感度を上げることが必須(既存の検出法は0.1%が限界);現時点では、複数の判定法を組み合わせる必要あり
  2. [論文] 合成生物学・代謝工学に必要な互いに直交するプロモーターのライブラリーをCRISPR/dCas9に拠って構築:Mattheos A. G. Koffas (Rensselaer Polytechnic Institute)
    • T7-lacプロモーターにランダムな部位特異的変異導入し、プロモーター強度をスクリーニングし、必要なプロモーター変異体を選択・シーケンシングし、対応する変異配列をスペーサーとして1個含むCRISPRアレイを作出、このCRISPRアレイとdCas9からなるリプレッサー・プラスミドを構築。LacIとdCas9によって調節可能なハイブリッド・プロモーターのパネルを整備。
    • 直交性は、PAMに隣接して発生するRNA-DNAハイブリッドの狭い領域における2塩基または3塩基のミスマッチに拠って実現されることを確認。すなわち、PAM近接領域における1塩基のミスマッチは、dCas9を介した転写抑制を消滅させるには不十分であった。このミスマッチに対する許容性が、標的のコピー数に依存することも見出した。
    • 分岐のあるヴィオラセイン生合成パスウエーをモデルとして、今回開発したdCas9-プロモーター変異体を独立な代謝スイッチとして利用可能なことを実証。
  3. [論文] 2種類の配列モチーフが外来DNAから獲得するプロトスペーサーの長さを決めている:Hua Xiang (Institute of Microbiology, Beijing)
    • Haloarcula hispanica のタイプタイプI-B型CRISPR/Casシステムにおいて、長さ30-bpの精密な繰り返しが、リーダー・リピート・ジャンクションから〜10bp下流に位置するAACCCと、そのGTGGGの2種類のモチーフに拠って保証されるていることを見出した。
    • 先頭のリピートの中間部分に存在する2種類のモチーフAACCCとGTGGGを、インテグラーゼ複合体(プロとスペーサー, Cas1, Cas2そしておそらくCas4)が認識すると考えられる。