(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160425)
    • この4月20日と21日、Emmanuelle Charpentier、Zhiwei Huang、そしてFeng Zhangと濡木 理の3研究チームによって、Francisella novicida 由来Cpf1の機能、Lachnospiraceae bacterium 由来Cpf1の結晶構造、そしてAcidaminococcus sp.由来Cpf1の結晶構造の報告が、Nature 誌とCell 誌から相次いでオンライン出版された。 36890001
    • Cpf1はFeng Zhangらが発掘し、Cas9にない特徴があること(tracrRNA不要、チミン(T)リッチなPAMを認識、切断後に5’突出末端を残す、など)、さらに、Acidaminococcus sp. BV3L6 とLachnospiraceae bacterium ND2006 由来の2種類のCpf1が、ヒト細胞のゲノム編集に適用可能なことを2015年に発表して以来、ゲノム編集ツールボックスを大きく拡張するエンドヌクレアーゼとして注目を集めてきた。
    • E. Charpentierらの成果はCRISPR関連文献メモ_2016/04/21に採録しており、本記事には、結晶構造解析論文2報を採録した。Cpf1が標的DNAを認識し切断する構造基盤が明らかにされたことにより、Cpf1改変によるゲノム編集ツールボックスの拡張も進展すると考えられる。
  1. [論文] Lachnospiraceae bacterium Cpf1(LbCpf1)と43-nt cr RNAの2者複合体構造解析:Zhiwei Huang (ハルビン工業大学)
    • cr-RNAが結合したLbCpf1は、N末端のヘリックスドメイン(H1とH2)、中央のオリゴヌクレオチド結合ドメイン(OBD)そしてC末端RuvCドメイン(RuvC-I,-II,–III)で構成され、正電荷を帯びた大きなチャネルを抱えたコンフォメーションをとっていた(OBDとRuvC、H1、そしてH2とRuvC-IIと-IIIの間の未知の(UNKNOWN)ドメインがそれぞれを1辺とする3角形)。crRNAと標的DNAとのヘテロ二重鎖はこの中央チャネルで形成されることが示唆された。
    • LbCpf1のオリゴヌクレオチド結合ドメインに認識されるcrRNAは、分子内相互作用と(Mg(H2O)6)2+イオンによって固定される極めて歪んだコンフォメーションをとっていた。
    • LbCpf1のOBDに存在するループアウトしたαヘリックスドメイン(looped-out domain, LHD)が基質結合の鍵を握っていた。
    • crRNAの結合によって、Cpf1がコンフォメーションを大きく変化させて中央部のチャネル構造が形成され、そこに標的DNAが結合するモデルを提唱。
  2. [論文]souyaku_icon_32[PDIS] Acidaminococcus sp Cpf1(AsCpf1)/cr RNA/標的DNA二本鎖の3者複合体構造解析: Feng Zhang (Broad Inst;McGovern Inst;MIT/ビデオ(1min52sec)へ);濡木 理(東京大学/ビデオ(5min30sec)へ
    • AsCpf1の3者複合体の構造を解き、Cpf1とCas9の相違点を詳らかに論じた。
    • AsCpf1は、αヘリックスで形成される認識ローブとヌクレアーゼ・ローブの2つのローブからなり、RNA-DNAのヘテロ二重鎖はその間の正電荷を帯びた中央チャネルの間に結合していた。
    • AsCpf1には、RuvCドメイン(RuvC-I,-II,–III)と、RuvC-IIと-IIIの間に位置する新奇なヌクレアーゼ・ドメインと思われる領域が存在し、それぞれが、crRNAの非標的ストランドと標的ストランドを切断し、標的サイトに突出末端を残す。
    • AsCpf1は5’-TTTN-3’のPAMの塩基と構造の双方を認識して結合することが明らかになった