(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20150926)
Feng Zhang (Broad Inst.) 研究チームは、クラス2のV型CRISPRシステムエンドヌクレアーゼ、〜1,300アミノ酸の大きさのCpf1 (Prevotella Francisella 1 由来CRISPR) 、の構造と機能を解析した.
  • Francisella novicida U112 のCpf1を含むCRISPR/Cas遺伝子座は、獲得免疫の活性を有していた.
  • Cpf1システムにはCas9システムには無い特徴があった:
    • Cas9システムと異なり、成熟crRNA産生過程を始めとしてtrans 活性化crRNA (tracrRNA)を必要としなかった → 標的DNAへガイドするRNA設計が容易になる.
    • Cas9システムは、グアニン(G)リッチなPAMに隣接する標的DNAを切断するが、Cpf1システムはチミン(T)リッチなPAMに隣接する標的DNAを切断した → ATリッチなゲノムの編集に有用である.
    • Cpf1によるDNA二重鎖の切断は、4-ntまたは5-ntの5末端オーバハングを伴う付着末端をもたらした → 挿入方向を選択可能な挿入DNA設計が可能になる;非相同末端結合修復機構によるDNA挿入が可能になる.
  • ゲノム編集への応用の観点から、16種類のバクテリア由来Cpf1ファミリーを評価した結果、Acidaminococcus sp. BV3L6 とLachnospiraceae bacterium ND2006 由来の2種類のCpf1が、ヒト細胞のゲノム編集に適用可能なことを見出した.すなわち、CRISPR/Cas9で実現されていたゲノム編集の適用をさらに拡げることを可能にするツールを見出した.
  • [注 *] CRISPR/Casシステムは、ほとんどのアーケアと多くのバクテリアの獲得免疫を担っているが、その分子機構は多様であり、現在はヌクレアーゼ・エフェクターの構成に基づいてクラス1とクラス2に分類されている.クラス1CRISPRシステムは、数種類のCasタンパク質とcrRNA (CRISPR RNA)からなるエフェクター複合体を、クラス2のCRISPRシステムは、一つの大きなCasタンパク質とcrRNAからなるエフェクター複合体を利用する.クラス1 CRISPRシステムにはⅠ型システムとⅢ型システムが存在し、これまでに構造と機能が詳細にしらべられて来た.クラス2 CRISPRにはCas9をエンドヌクレアーゼとし広範に解析利用されてきたⅡ型システムと、これまでV型システムと呼ばれているCRISRシステムが帰属されていた.
1 論文→Bernd Zetsche et al. "Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System." Cell. 2015 Oct 22;163(3):759-771. Published online 2015 Sep 25 (In Press Corrected Proof).
1 NEWS →Heidi Ledford. "Alternative CRISPR system could improve genome editing - Smaller enzyme may make process simpler and more exact. " Nature. Published online 2015 Sep 25.
1 RESEARCH HIGHLIGHTS→Joana Osório. "A novel CRISPR–Cas system for easier genome editing?" Published online 2015 Oct 20.