[出典] "Development of a gene-editing approach to restore vision loss in Leber congenital amaurosis type 10" Maeder ML, Stefanidakis M [..] Jiang H. Nature Medicine. 2019-01-21;RESEARCH HIGHLIGHT "CRISPR restores expression in models of vision loss" Cully M. Nat Rev Drug Discov. 2019 Feb 7.
概要
- 2018年11月30日に米国FDAが初のCRISPR遺伝子編集の治験薬として承認し(*)、2018年6月7日に特許公開 (**)されたEditas MedicineのEDIT-101をテーマとする研究論文が、Editas Medicineの研究チーム (Fulcrum Genomicsからのコンサルタントを含む)によりNature Medicineに発表された。
- EDIT-101は、重篤な網膜ジストロフィーであるLCA10の原因であるCEP 290遺伝子の変異を標的とするSpCas9よりも小型なSaCas9による遺伝子治療法である。
- 研究チームは、LCA10で最も高頻度な IVS26変異 (イントロン26におけるアデニンからグアニンへの点変異)によって新生されるスプライスドナー部位を除去することでCEP290の正常な発現を回復することを目的としてEDIT-101を開発した。
詳細
- LCA10患者由来線維芽細胞にSaCas9とgRNAペアをAAV5でデリバーし、野生型CEP290 mRNAの発現上昇と変異型発現の低下および全長CEP290タンパク質発現の上昇を評価し、最も修復率が高いgRNA 64と323のペアを同定した。このgRNAペアの2ヶ所の標的部位の中間領域には削除あるいは逆位が発生していた。
- 次に、網膜培養系を構築し、光受容器特異的GRK1プロモーターを利用したEDIT-101により、視力回復に十分な修復効率16.6±6.5%を達成した。また、オフターゲット編集はGUIDE-seqとDigenome-seqの検出限界以下であった。
- さらに、CEP290 IVS26ノックイン・マウスモデルの網膜下にEDIT-101を注入し3日から9ヶ月まで観察し、SaCas9とgRNA発現が早期に検知され長期間維持されること、また、用量に発現と変異編集率が依存することを見出し、臨床効果をもたらす網膜中心窩錐体細胞の修復効率10%を実現するEDIT-101の用量を同定した。
- ヒト化CEP290マウスの網膜下にEDIT-101を注入し、CEP290遺伝子の編集が迅速かつ継続することを確認した。しかし、マウスのヒトと異なり、黄斑 (macula)を欠き、光受容器の90%以上が桿体細胞であることから、カニクイザル・モデルでの検証も行い、10%の閾値を超える編集効率を確認した。
- 2018-12-03 米国、レーバー先天黒内障タイプ10 (LCA10)のCRISPRゲノム編集療法の治験開始へ
- CRISPRメモ_2018/09/04 - 4. 眼疾患の遺伝子治療: 期待と懸念
- CRISPRメモ_2018/06/15 6. [特許]レーバー先天性黒内障などCEP290遺伝子関連疾患のCRISPR/Cas遺伝子治療
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