1. ヒト胚遺伝子編集がもたらした課題とヒト胚遺伝子編集に向けての課題
[出典] "Technology Feature "A rocky road for the maturation of embryo-editing methods" Marx V (Technology editor for Nature Methods) Nat Methods. 2019-01-21.
- ヒトの基礎生物学のツールとして、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術の最適化が、急ピッチで進み、胚の発生と分化の研究、幹細胞の改変と解析、疾患モデル動物の開発に利用されている。遺伝子編集実験によって、体外受精技術が必ずしも成功しない原因を究明していくことも可能である。こうした遺伝子編集技術の開発と応用は、やがて、体細胞編集あるいは胚における遺伝子編集による遺伝子疾患療に至る。しかし、2017年8月2日にNatureオンラインで発表された心疾患病因変異修復のMa論文を巡る議論*は、はからずも、胚ゲノム編集の実用化には、胚における遺伝子修復機構をはじめとする分子機構の理解を深める必要があることを改めて認識させた (* CRISPRメモ_2018/08/10 - 1. ヒト胚ゲノム遺伝子編集において、父系アレル変異は、母系相同配列をドナーとするHDR過程で修復されるのか?)
- Ma論文に疑義を呈した論説 ("Inter-homologue repair in fertilized human eggs?")の責任著者の一人であったMaria Jasinは、第2回ヒトゲノム編集国際サミットにおいて、胚発生段階でのDNA修復がいかに複雑な過程であるかを説き、胚におけるいδ寝し編集について"我々がいかに知らなかったかを知らなかった"と述べた。Jasmin等の胚遺伝子編集実験が認識させた基礎研究の必要性と重要性に関する議論は、しかし、第2回ヒトゲノム編集国際サミットでは、CRISPR babises*の話題の中で置き去られてしまった (第2項参照)。
- 本記事では研究者の見解を引用しながら、胚遺伝子編集に向けての課題として、CRISPR-Casシステムのデリバリー・活性制御・遺伝子編集に影響を与える因子の識別と評価・マイクロインジェクションの難度と再現性、オンターゲット変異とオフターゲットの検出と回避、モザイク現象 (mosaicism)の回避と品質管理、胚の多様性 (マウスモデルとヒト;父性ゲノムと母性ゲノム)、LuLuとNanaの将来について論じている。
2. CRISPR遺伝子改変ベビー中国で誕生か(5) - 解雇
[出典] "CRISPR-baby scientist fired by university" Cyranoski D. Nature. 2019-01-22.;"Guangdong releases preliminary investigation result of gene-edited babies" 新华网 (XINHUANET). 2019-01-21 18:27:58. "which is explicitly banned by relevant regulations."
- 新华网によると、広東省地域保健医療当局は、He Jiankuiの行為を生命倫理と研究倫理に反し国の規制も犯したとする判断を下した。当局中国ではHIVのキャリアの生殖補助が禁じられていることから、He Jiankuiは、ボランティアとは他人の血液検査を指示し、胚遺伝子編集を進めたとした。これを受けて、深圳市の南方科技大学は1月21日に「He Jiankuiを解雇」と発表した。
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