1. [プロトコル] 微生物ゲノムの大領域をCas9を利用して分離・クローニングする実験プトロコル:Wenjun Jiang; Ting F. Zhu (清华大学)
    • 2015年にNature Communication に発表したCATCH(Cas9-Assisted Targeting of CHromosome segment)法の詳細なプロトコル
    • 微生物ゲノムの大領域にわたる遺伝子クラスターの活用が、ポリケタイドやバイオ燃料など有用物質の生産に欠かせないが、遺伝子クラスターの合成、PCRや制限酵素による遺伝子クラスターの分離・クローニングには一長一短があり、特に、大規模な遺伝子クラスターの分離・クローニングは困難であった。
    • CATCH法は、アガロースゲルに埋め込んだ微生物の染色体の標的領域をCas9-sgRNAで切り出し、標的領域の両端とそれぞれ30bp重なるクローニング・ベクターにギブソン・アッセンブリー・システムで連結する手法であり、ゲノム領域100kbまでの長さの分離・クローニングが可能。
    • CATCH法は、特別の器具・装置を必要とせず、微生物ゲノムの場合で数日間にわたる〜8時間のベンチ作業で分離・クローニングを完了。
    • Cas9による溶液中でのDNA切断(in-solution Cas9 digestion)法に対して、CATCH法には、DNAのせん断が起こらず、標的以外のDNA断片の混入が無く、Cas9による切断後に直ちにパルスフィールドゲル電気泳動法による切断効率を判定するとが可能という利点がある。
    • CATCH法は、微生物以外の生物種にも適用可能。
  2. [NEWS FEATURE] Emmanuelle Charpentierが歩いてきた道:Alison Abbott (Nature Correspondent)
    • CRISPR/Cas9システムの発掘者の一人E. Charpentierのパスツール研究所での病原菌薬剤耐性機構の研究から、米国、オーストリア、スエーデンそしてドイツと5ヶ国9研究室を渡り歩きながら45歳で初めて自ら主催する研究室を立ち上げ、その20年の間に、Streptococcus progenies の病原性の分子機構の研究過程でtrancrRNAを発見し、続いてCRISPR/Cas9システムを見出し、Nature 誌にFrancisella novicida 由来Cpf1が、crRNA生成と外来DNA切断の’一人二役’酵素であることを明らかにするまでを辿った記事。
    • E. Charpentierの経歴は、Wikipediaをはじめとして数々の受賞関連Webサイトに掲載されているが、本記事には「機知に富み無人島でも研究室を立ち上げられる」、「(良い意味で)カウンターカルチャー的」といった人物評や、Streptococcus pneumoniae の全てのsmall RNAsを決定することになる共同研究者Jörg Vogel、tracrRNAとcrRNAが相互作用する仮説を実証する実験の引き受け手を見つけるのに苦労していた時に実験を引き受けて結果を出した修士課程のElitza Deltcheva、そして、生化学者のJennifer Doudnaらとのエピソードが交えられている。