[出典] "Tracking tumour evolution in glioma through liquid biopsies of cerebrospinal fluid" Miller AM, Shah RH, Pentsova EI [..] Berger MF, Mellinghoff IK. Nature. 2019-01-23.

背景・概要
  • リキッドバイオプシーは、血中を循環する腫瘍由来DNA(circulating tumor DNA, ctDNA)をシーケンシング解析する非侵襲的な手法であり、悪性腫瘍の早期診断や経過観察への応用が期待され、近年、感度と精度を向上させる研究開発が盛んに行われている。
  • Memorial Sloan Kettering Cancer Center (MSKCC)の研究グループは今回、このリキッドバイオプシーの手法を脳脊髄液(cere brospinal fluid, CSF)に展開し、脳の悪性腫瘍であるグリオーマの診断と予後を観察する手法として評価した。
詳細
  • 研究グループは、外科手術または放射線治療を受け少なくとも1種類の化学療法を受けた85人のグリオーマ患者から腰椎穿刺によって採取した脳脊髄液から遠心分離した上清を解析した。すなわち、MSKCCで開発しパラフィン包埋組織の分析法としてFDAの承認を得ていたMSKCC-IMPACTでシーケンシングとバイオインフォマティクス・パイプラインを経て、85人中42人にctDNAを発見した。42人のうち10人は悪性度のグレードⅡまたはⅢのいわゆるlow grade glioma (以下、LGG)であり、32名はグレードⅣ、6名はDNAハイパーミューテーションを帯びていた。
  • CSF ctDNA陽性と、悪性度、発病期間あるいは治療法との間に有意な相関は見られなかった一方で、腫瘍負荷および予後不良との相関が見られた。
  • 変異の種類は多様であり、タンパク質コーディング領域の変異、コピー数変化、プロモーター領域の変異が見られ、中でも、TERTプロモーター領域の変異、TP53IDH1のコーディング領域の変異、CDKn2ACDKN2Bの欠失、および、EGFREGFRvⅢ の増幅が高頻度であった。
  • LGG患者の腫瘍形成初期に見られる染色体腕1pと19qの欠損やIDH1またはIDH2変異といった代謝遺伝子の変異は長期間持続するが、EGRFの変異は経過とともに大きく変化した。
  • ctDNAの遺伝変異プロファイルは腫瘍バイオプシーからの変異プロファイルと概ね整合したが、CSFリキッドバイオプシーのctDNAの検出感度は血液リキッドバイオプシーよりも高く、また、CSFにおいて腫瘍細胞が検出されない状態でctDNAによるグリオーマ診断が可能なことが示唆された (標準的な細胞病理解析の結果、CSF ctDNA陽性の患者の90%が腫瘍細胞非検出)。
  • 脳脊髄液は腰椎穿刺で採取する必要があり血液バイオプシーに比べて侵襲性が高く、また、今回の実験ではグリオーマ患者のほぼ半分についてCSF ctDNAが検出されなかったが、グリオーマの診断、治療経過の観察そして新規開発治療法そしてまたは個別化治療に対する耐性発生の検出に有望な手法として、CSFリキッドバイオプシーのさらなる技術開発が望まれる。