(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20141226)

[出典] "GUIDE-seq enables genome-wide profiling of off-target cleavage by CRISPR-Cas nucleasesTsai SQ [..] Joung JK. Nat Biotechnol 2015 Feb;33(2):187–197. Published online 16 December 2014.

 CRISPR-Casシステムはゲノム編集の強力な手段であるが、編集のターゲットとしたサイト以外でのインデル染色体転座が発生するオフターゲット効果が伴う。このオフターゲット効果は、ゲノム編集の対象が非常に大きな細胞集団になる臨床応用においては、極めて低頻度であっても、抑止する必要がある。

 この課題解決に向けて、マサチューセッツ総合病院のJ. Keith Joung等の研究チームは、Cas9を典型とするCRISPR RNAにガイドされるヌクレアーゼ(以下、RGNs)に拠って生細胞中で起きるDNA二本鎖切断(以下、DSBs)をゲノム全域にわたって偏り無く同定する実験手法、GUIDE-seq (genome-wide, unbiased identification of DSBs enabled by sequencing)、を開発した。

  • GUIDE-seqでは、in silicoではなく、Cas9が誘導する二本鎖切断 (DSB)サイトに、NHEJを介して挿入されるタグとなるdsODNを偏りなく増幅してシーケンシングすることで、オフターゲットを判定する。最適化の一環として、平滑末端の5'末端をリン酸化し、5'末端と3'末端の3塩基の間の全てのリン酸基をS化 (ホスホロチオエート結合)して安定化したdsODNを採用した。
  • Cas9を含む13種類のRGNsの2種類のヒト細胞株(骨肉腫細胞U2OSとヒト胎児腎細胞HEK293)におけるオフターゲット効果をGUIDE-seqによって解析し、オフターゲット効果がRGNsに依存する多様な現象であることを見出した。また、オフターゲット・サイトの配列の特徴を分析した。
  • GUIDE-seqは、不活性なCas9(dCas9)を対象としたChiP-seqならびに2種類の予測プログラム(MIT CRISPR Design ToolE-CRISP)では検出されなかったオフターゲットサイトを多数同定し、また、RGNsに依存しないゲノム切断のホットスポットを同定した。
  • さらに、ヌクレアーゼをターゲットへガイドするRNA(gRNA)を、ターゲット配列に相補的な全長からトランケートしたtru-gRNAsに置き換えることによって、RGNが引き起こすオフターゲットのDSBsを抑制できることを確認した。