1. CRISPR/Cas9によるファンコーニ貧血遺伝子治療の可能性
[出典] "Effective CRISPR/Cas9-mediated correction of a Fanconi anemia defect by error-prone end joining or templated repair" van de Vrugt HJ [..]Te Riele H. Sci Rep. 2019-01-25.
  • ファンコーニ貧血 (Fanconi anemia, FA)はDNA修復過程における遺伝子変異が病因である。FA療法として、骨髄移植や正常なFANCA遺伝子をレンチウイルスで送達した造血幹細胞の移植が存在するが、CRISPR/Cas9技術に基づく遺伝子編集に、侵襲性と副作用が抑制された療法を期待できる。一方で、FAのDNA修復機構の不全がCRISPR/Cas9による遺伝子編集の障害になる可能性がある。
  • The Netherlands Cancer Instituteの研究グループは今回、FAの主要なアダプタータンパク質であるFANCFをコードする遺伝子Fancfの変異を標的としてCRISPR/Cas9による修復を試み、CRISPR/Cas9によるDNA切断 (二本鎖切断/DSBまたは一本鎖切断/SSB)からのNHEJまたは相同組み換え修復 (HR)修復を介して、FA関連遺伝子の一つである機能を効果的に回復することに成功した。
  • HRを介した遺伝子編集の効率は低い (≤ 6%)が、遺伝子修復が起こったマウスES細胞は、修復が起こらなかった細胞よりも、高い増殖能を示し、Cas9D10AニッカーゼとssODNをテンプレートとするHRによるオフターゲットが抑制された精密な単一アレル編集が、臨床へ展開可能なことを示唆した。
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2. [レビュー] CRISPR-Cas9による癌療法:期待と課題
[出典] REVIEW "CRISPR-Cas9 for cancer therapy: Opportunities and challenges" Chen M, Mao A, Xu M, Weng Q, Mao J, Ji J (The Central Hospital of Zhejiang Lishui; Shanghai St. Luke's Hospital). Cancer Lett. 2019-01-23.
  • 癌はゲノム/エピゲノムの変異の蓄積により発症する。CRISPR-Cas技術は、多様な細胞と生物のin vitro/in vivoにおける遺伝子ノックアウトと改変に利用されており、癌療法への応用を十分に期待できる。一方で、臨床応用には、編集効率、送達法、オフターゲット編集、編集した細胞の適応度など、解決しなければならない課題が山積している。CRISPR-Cas9癌療法の可能性と最近の進展をまとめ、課題について論じた。
3. CRISPR-Cas9ヌクレアーゼがヒト培養細胞に与える影響は最小限である
[出典] "Multi-omic analyses reveal minimal impact of the CRISPR-Cas9 nuclease on cultured human cells" Qiang J [..] Zhang Y. J Proteome Res. 2019-01-23.
  • トランスクリプトーム、プロテオーム、ホスホプロテオーム、Cas9に相関するタンパク質のインタラクトーム、タンパク質合成およびヒストンエピゲノム修飾の分析を総合して、Cas9発現に対するヒト細胞の応答を解析した結果。
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4. バーコードをgRNAsに埋め込むことで、プール型CRISPRスクリーンの可用性を高める
[出典] "Guide RNAs with embedded barcodes boost CRISPR-pooled screens" Zhu S, Cao Z, Liu Z, He Y [..] Wei W. Genome Biol. 2019-0124
  • プール型sgRNAまたはpgRNA (paired-gRNA)を利用したCRISPRスクリーンにおいて、偽陽性/偽陰性を抑制し再現性を高め統計的に有意なヒットを得るために、MOI (multiplicity of infection)を低くほとんどの細胞が単一のsgRNA/pgRNAを帯びるように調節し、標的をgRNAsで十分に被覆し、実験を繰り返す工夫がされている。この工夫はライブラリーの大規模化をもたらし、ゲノムワイドスクリーニングやin vivoでの難度の高いスクリーニングの障害となる。
  • 北京大学を中心とする中国と米国の研究グループは今回、新たな工夫を提案・実現した。すなわち、Cas9-sgRNA RNPの外側のgRNAスキャフォールドのループ領域に4,096種類のバーコードを生成可能な6-ntの長さのバーコード配列を埋め込み (原論文Fig 1の一部とFig2を引用した下図左上参照)、gRNAsと、gRNAsに内在するバーコード (internal barcode, iBAR)の双方をカウントし、iBARを考慮して改変したMAGeCKアルゴリズムで解析することで、高MOIによる信頼性の高いスクリーニングを実現した。 iBAR 2019-02-01 14.17.06
  • MOI=0.3でのスクリーニングに必要なライブラリーの規模を、MOI=3で10分の1に、MOI=10で35分の1に縮小可能である。また、1 sgRNAあたり4種類のバーコード配列を用いることで繰り返し実験に相当する精度を得られる。大規模なスクリーニング、希少なサンプルを対象とするスクリーニングに加え、特に、レンチウイルスによる導入効率を予測することが困難で個体ごとに変動するin vivoのスクリーニングにiBARは有効である。
参考:プール型CRISPRスクリーニングにおけるバーコード(sgRNA外)の利用
  • "CRISPR-UMI: single-cell lineage tracing of pooled CRISPR-Cas9 screens" Michlits G [..] Elling U. Nat Methods. 2017-10-16
  • "CRISPR/Cas9 screening using unique molecular identifiers" Schmierer B, Botla SK [..] Taipale J. Mol Syst Biol. 2017-10-09.